ひとりの少女の死を巡って問われる衝撃の事実とは。1976年にドイツで発生した事件を元に製作されたホラーサスペンス。
悪魔にとり憑かれたという19歳の大学生エミリー(ジェニファー・カーペンター)に悪魔祓いを施した結果、死に至らしめたとして過失致死罪で起訴されたムーア神父(トム・ウィルキンソン)。凄腕の検事であるイーサン・トマス(キャンベル・スコット)に対抗するべく、弁護を依頼されたのは野心家のエリン・ブルナー(ローラ・リニー)。
エミリーはルームメイトが帰省したある夜、午前3時に大学の寮で目を覚ました。焦げ臭い臭いがする。火事なのか?だが、どこにも火の気はない。不審に思いながらも再び眠りにつこうとする彼女を突然襲う原因不明の痙攣と激しい幻覚。それ以降、時を選ばず起こる痙攣と幻覚に悩まされるエミリー。大学病院で精密検査を受けるが、一向に症状は回復する気配がない。自宅で静養することになった彼女だが、次第に悪化していく症状に悪魔がとり憑いたからだと確信した彼女はムーア神父に全てを託すことにする。だが、彼女は死んでしまった。あまりにも無残な姿で。
エミリーは精神を冒されており、薬の服用を止めさせたことが死の原因だと主張する検察側に対し、はじめは半信半疑ながらもムーア神父の真摯な主張をもとに悪魔の存在を証明しようとするエリンだったが…
ホラーとかオカルトと思って観ると肩透かしを食らうかも。正確にはオカルト色のある法廷劇ですな。しかし、オカルト描写はそれほど多くないが、その数少ないシーンがエミリー役のジェニファー・カーペンターの鬼演技で凄まじいくらいに怖い。つ〜か、彼女の顔って素で怖いんですけど。クトゥルフ神話作品で有名なH・P・ラヴクラフトの血でもひいてんのかと真剣にオモタよ。若しくは嶋田久作。悪魔にとり憑かれる前から既に顔が怖いのはいかがなもんかと。顔が怖いとか顔が長いとかはおいといて。
特殊効果をさほど使用することなく、ほぼ演技のみで悪魔憑きを表現したジェニファー・カーペンターの演技っぷりはスゴイと思う。ボーイフレンドがうたた寝をしてて、ハッと目を覚ましたらエミリーが変な方向に手足をよじって、スゲェ形相で床に転がってるシーンには思わずドキリとさせられたよ。もう絶対、なんかがとり憑いてますってカンジ。
それにしても。劇中でエミリーは非常に信仰深かったといわれておりますが、信仰深い故に、神を信じるが故に悪魔に憑かれるというのが一番怖い。神を肯定することは悪魔をも肯定することなのか。
エミリーの死は過失致死なのか、それとも悪魔にとり憑かれたせいなのか。争われる裁判。不可知論者であると言い切るエリン。エミリーに起こったことを語ることが一番大切なのだと訴えるムーア神父。法廷劇と悪魔憑きという、およそかけ離れた要素をうまい具合で融合させたストーリー展開は見応え充分。野心家であるエリンがムーア神父の真摯な訴えに心を動かされていく様子もいい。しかし、悪魔を相手にするとはエラく度胸がある弁護士さんだ。シリアルキラーを相手にするよりも性質が悪いぞ。呪われますからね。
実話を元にしたと言われておりますが、エリンが体験したコトや悪魔祓いの現場に立ち会ったカートライト博士に起こった出来事は実際にあったことなんだろうか。まさかねぇ?
エミリーがどれだけ信仰深かったのか、彼女がどんな夢や希望に満ち、大学へ進学したのかというのがあまり描かれておらず、エミリーの人柄が明瞭でない点とストーリー後半はキリスト教圏の人でないと理解しがたい展開なので星6つ。
2005年/アメリカ/120分/監督:スコット・デリクソン
THE EXORCISM OF EMILY ROSE
2010.02.03記