この中に犯人がいる?
アガサ・クリスティ原作の推理小説をオールスター・キャストにて映画化。イスタンブール発の豪華列車、オリエント号で殺人事件が発生。偶然乗り合わせた名探偵ポワロは自慢の推理力で犯人を突き止めようとするが、乗客全員にアリバイがあり捜査は暗礁に乗り上げる。
1930年、ロングアイランドに住む大富豪アームストロング家の3歳になる1人娘が誘拐された。20万ドルという巨額の身代金が支払われたにも関わらず、幼児は死体となって発見された。ショックのあまり夫人も亡くなり、アームストロング自身も度重なる不幸にピストル自殺を遂げてしまう。
5年後、イスタンブール駅。アジアとヨーロッパを結ぶ豪華な大陸横断国際列車オリエント急行が、さまざまな乗客を乗せて発車しようとしていた。探偵エルキュール・ポワロ(アルバート・フィニー)も乗客の1人で、ロンドンへの帰途につくところだった。
やがて列車は3日間の旅に向け動き出す。3日目の朝、ポワロの隣りのコンパートメントにいたアメリカ人の億万長者ラチェット(リチャード・ウィドマーク)が刃物で身体中を刺されて死んでいるところを発見される。偶然乗り合わせた古い友人で鉄道会社の重役であるビアンキ(マーチン・バルサム)に依頼され、この事件の解明を引き受けるポワロ。だが、同じ一等寝台の車掌と12人の乗客たち全員にアリバイがあった…
原作が良くても映画化した途端、凡作になるもの数あれど、これはなかなか上手くまとまってます。それになにより女優陣が絢爛豪華で嬉しい限り。ジャクリーン・ビセットにローレン・バコール、イングリッド・バーグマン、ヴァネッサ・レッドグレーヴ。特にローレン・バコール。お年は召しているが、相変わらず華やか。彼女のツンとした表情に弱い。そして着こなしがおしゃれ。30年代に流行した髪形、ファッションがとてもお似合いデシタ。ジャクリーン・ビセットもお美しい。ヴァネッサ・レッドグレーヴとイングリッド・バーグマンはビューティ度ではやや劣るが、演技派ぶりを存分に堪能。ただイングリッド・バーグマンがこの作品でアカデミー助演女優賞を獲ったのは少々驚いた。他の候補がさらに地味だったせいなのか。
華やかな女優陣に比べて男優陣の印象が弱いかも。ショーン・コネリーでさえ印象薄い。まぁ、往年の大女優や厚塗り公爵夫人の前では影も頭も薄くなるのも仕方がないわね。あ、改めて観てビックリ。ジャン=ピエール・カッセルが出てるじゃありませんか!ちょっと嬉しい。ヴァンサン・カッセルのお父ちゃんなんだけど、「コミック・ストリップ・ヒーロー」で彼を知って、そのクールな眼差しに惚れちゃったのよ。倅のヴァンサンのムンムンするワイルドさとは違った上質なお色気を感じちゃうのよ。この作品では車掌役なんだけど、出番は少ないながらもイイ味出してるわ。ウレチイ。
ポワロ役のアルバート・フィニーはあまり好評じゃなかったのか、この後オールスターキャストによるクリスティ・ミステリの映画化作品には顔を出してナイ。ポワロにしてはデカいし、お腹がセリ出し過ぎだし。そしてなによりあのダミ声がKORO的に受付けマセン。しゃべり方や表情に品がないのよね。悪人面なのも減点。やっぱり、ポワロが一番似合うのはTVシリーズのデヴィッド・スーシェだな。
原作を読んでるのでラストに驚きはなかったケド、そんなことは無問題。豪華なキャスト陣が魅せる演技をたっぷりご披露してくれるので、鑑賞中はそのゴージャスな雰囲気に酔い痴れておりマシタ。○○のシーンもとても余韻があって結末を知っていながらも涙しちゃったわ。殺人事件のお話なのにラストは何故か晴れ晴れとした気分になるのよね。ホントは反則なんでしょうケド。ポワロが犯人は○○だ!とか言ったら、結果はどう考えても○○○→○○へ○○→○○というのが目に見えてるので、ああするしかなかったとは思うけども。クリスティの作品って結構、反則スレスレのものが多いですからね。そこが醍醐味でもあるわけですが。
豪華なセット、流麗な音楽、きらびやかな衣装。原作は有名なので結末も知れ渡っているとは思うが、そんなことは関係なく楽しめる上質なミステリ作品。
1974年/イギリス/128分/監督:シドニー・ルメット
MURDER ON THE ORIENT EXPRESS