悪魔の手毬唄

古い因襲に縛られ、文明社会から隔離された鬼首村(オニコベムラ)で古くから村に伝わる手毬唄の歌詞に見立てた殺人事件が発生する。20年前の迷宮入り事件を依頼され、村を訪れていた金田一耕助は捜査に乗り出す。やがて事件の背後に村を二分する二大勢力、由良家と仁礼家の存在が浮かび上がってくる。金田一は真犯人を見つけ出すため手毬唄の秘密を追う。

昭和27年。文明社会から隔離された岡山と兵庫の県境、四方を山に囲まれた鬼首村。葡萄酒工場に勤める青年、青池歌名雄(北公次)には由良泰子(高橋洋子)という恋人がいたが、仁礼文子(永野裕紀子)もまた、歌名雄が好きだった。由良家と仁礼家は、昔から村を二分する二大勢力。だが20年前に恩田という詐欺師にだまされて以来、由良家の勢いは衰え、逆に仁礼家は村唯一の葡萄酒工場を興し、力を増していった。

由良家が勢力を衰えさせた20年前、村では歌名雄の父親の源治郎が後頭部を殴られた上に判別もつかない程に顔を焼かれ殺されるという事件が起きる。犯人は恩田と見られたが彼は事件直後に消息を絶ち、行方がつかめないまま時は過ぎた。

その事件を時効を迎えた今も執念で追いかけている磯川警部(若山富三郎)。彼は長年の謎を解くために金田一耕助(石坂浩二)に調査を依頼する。金田一が村を訪れた同じ日、人気歌手となった別所千恵(仁科明子)が里帰りし、盛大な歓迎会が開かれる。しかし、歓迎会の夜、第一の殺人事件が起き…


「よしっ、判った!」の加藤武の出番が少なくて、とりあえずホッ。若山富三郎演じる磯川警部がいいです。金田一とのコンビぶりが素晴らしい。脇を固める役者もみなさん、うまくて作品を締めてました。それと歌名雄役は北公次ですよ、アナタ!って、若い方は判らないわね。フォーリーブスの北公次。大和田獏もチョイ役で出てた。ウワッ。

金田一シリーズなんでおどろおどろしいイメージですが、シリーズ1作目の「犬神家の一族」に比べると大人しめ。ついでに犯人の動機が少々理解に苦しむ。長い原作を約2時間の映画にするのはムリだったようで犯人の心情が描ききれておらず、いまいち不自然。それと犯人が判るシーンも減点ざます。原作では全てが終ってしまった後、金田一によって淡々と犯行が明かされるワケで、そちらの方が犯人が何故、犯行に至ったか、そしてそんな犯人の哀れさが伝わってきて良かったのに。

ストーリーに多少不満はありますが、その吸い込まれそうな映像にはうっとり。舞台となる鬼首村は全体的に暗いトーンで描かれているんですが、それが因習に囚われた鬼首村の空気を見事に表現しているなと。間接照明を多用した柔らかい光に浮かび上がる古い日本家屋の中の障子や窓にも昭和初期の雰囲気が感じられて素晴らしかった。え、別にミーは昭和初期生まれではないですよ?

あ、忘れちゃいけないわ!ストーリー後半、渡辺美佐子と草笛光子、白石加代子が一堂に会するシーン。金田一に頼まれ、集まるおばさま3人ですが強烈な個性といいますか、女優魂を垣間見たというか。ある意味、手毬唄に見立てられた死体よりも怖いシーンでした。特に白石加代子。怖すぎ。

推理ものというよりは、悲しい男と女の話。ラストの磯川警部と金田一のやりとりにちょっとしんみり。
1977年/日本/144分/監督:市川崑
悪魔の手毬唄

「DVDの特典ディスクには“加藤武が語るよしっ、わかった!インタビュー”がある」
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