Watch with Me〜卒業写真〜

ずっと一緒に居れたら、と願った

福岡県の東久留米市を舞台に、癌を患い余命半年と宣告された元報道カメラマンが故郷に戻り、中学生時代の思い出を辿りながら、それを見守る妻や友人達、看取る側と看取られる側の心の襞を描いたヒューマン・ドラマ。

上野和馬(津田寛治)は癌を患い、余命半年と宣告された元報道カメラマン。自らの死を受け入れてはいるが、やはり生きる希望を捨てきれない自分自身との葛藤が続く日々。残り少ない余生を懐かしい故郷で過ごしたいと、和馬は東京から故郷の福岡県東久留米市へと帰る。同級生だった医師が勤務するホスピスに入院する和馬。妻の由紀子(羽田美智子)も教師の職を辞め共にやってきた。彼らの元に、中学時代の同級生たちが見舞いに訪れ、和馬と自分の思い出を語りはじめるが、和馬にはどうしても思い出せないシーンがあった。

夢の中に現われる少女のシルエット。同級生達によるとその少女は和馬と親密な関係のあった転校生の萩原ひとみ(高木古都)だというのだが、一向に思い出せない。和馬は自らの記憶を呼び覚ますべく、由紀子や友人の協力を得ながら故郷の風景と友人達のスナップを散りばめた最後の写真集を完成させることを決意する。しかし、病は情け容赦なく和馬の肉体を蝕んでいく。


allcinemaONLINEでコメントがひとつもないのに驚いた。何故。もしかして誰も観てないのかよ!←それはナイだろ。ミーは号泣しましたよ。友人ゆっき〜のご好意によりご招待券を頂いての鑑賞でしたが、久々に邦画で泣かせて頂きました。一緒に行ったゆっき〜と共に中盤からは盛大に啜り上げた。人目も憚らず大いに泣いた。まぁ、鑑賞後はいっぱい泣いて水分大量放出したから、ビールが旨いなぁ!と大いに飲んだりしたワケだが。ミーの大酒くらいっぷりはおいといて。

和馬の中学生時代のパートは演じる子があまりに素人演技なので正直、ダルくて何度も睡魔に襲われたが、青春の甘酸っぱさは伝わってきた。中学生の男の子はまだまだガキなのです。同い年の女の子なんて不思議な存在でしかないのです。想いを寄せても見つめている先が違うのよ。少年はまだまだ先のことなんて考えられない。けれど少女は冷静にずっとずっと先を見つめていたりするのよ。ひとみを演じた高木古都ちゃんは演技ははっきりいってダメでしたが、ミステリアスな雰囲気はばっちりで素晴らしかったざますわ。ワタクシ、ああいう小生意気なお嬢ちゃんはけっこう好物ざんすから←何故ざぁます言葉なのだ。

展開は判っているのだが、それでもしっかり泣かされた。舞台が福岡県というのも泣きのポイントかもしれない。ミーは生粋の福岡県人ですから。懐かしい田舎の風景を留めた東久留米市の風景が郷愁を誘う。癌に冒され、志半ばにして死にゆく和馬が最後に求めた安息の場所。懐かしい風景、懐かしい笑顔、懐かしい香り。そして体力の衰えを押して最後の写真集作りに打ち込む姿。そんな和馬を複雑な思いで見つめる由紀子。

この由紀子って妻がもう鼻につく女でねぇ。登場してすぐ、イヤな女だな〜!とか激しく思いましたよ。私は癌に倒れた夫に献身的に尽くす妻です!教師の職も捨て夫の最期の願いを叶えるためにド田舎の東久留米についてきた甲斐甲斐しい妻です!私がこれだけ尽くしているのにどうしてアナタは私の気持ちが判らないの!自分さえ良ければいいの!って思いがぷんぷん伝わってきて、かなりキライなタイプの女だなぁと思ってたんだが。ストーリー後半で気付いた。由紀子の複雑な胸中に。

ホスピスに入り、一進一退を繰り返す和馬の病状。しかし死期がそこまで近づいてきていることを悟った和馬が写真集の完成に向けて焦りはじめ、由紀子の制止も聞かずに無謀な行動に走る。死にゆく夫を看取る由紀子に降り積もっていくストレス。写真集は一体、誰のためのものなのか?和馬自身のため?遺される者たちのため?それとも自分の知らない和馬の思い出の中に生きる少女のため?和馬の最期の願いだとは判っている。けれど撮り続けるべきなのか、撮らせてあげるべきなのか。死期が迫り、感情のコントロールに苦しむ和馬とそんな夫にどう対処していいのか悩む由紀子。彼女が爆発させる思い。死期の迫った夫にぶつけきれない思いを、彼女がぽろりと出してしまうシーンでミーの心は鷲掴みにされマシタ。

わぁぁぁ〜ん!アンタのことを誤解してたミーを許してくれ!ごめんよ、由紀子ぉぉぉ〜ッ!うん、羽田美智子はやっぱり上手いわ。由紀子の感情の機微を見事に表現しとったわ。津田寛治も激ヤセして余命いくばくもない癌患者を静かに熱演しておりマシタ。しかし、羽田美智子の演技には負ける。人はいつかは死んでいくものだけど、死が迫っているからこその生の輝きや、看取られる側の美しい思い出だけでなく、看取る側の耐え難い思いや嫉妬や醜いウソまでも描いた当作品。地味ではありますが、見応えのある作品デシタ。

ラストシーンの由紀子の穏やかな表情が心に沁みる。
2007年/日本/125分/監督:瀬木直貴
Watch with Me〜卒業写真〜
2009.02.28記

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