暴力脱獄

酒に酔い、街のパーキングメーターを損壊した罪でフロリダの刑務所に収監されたルーク・ジャクソン(ポール・ニューマン)。彼は戦場で多くの勲章を得て一時は軍曹にまで昇進しながら、二等兵として除隊された男だった。

刑務所でルークを待っていたのは過酷な労働や懲罰で囚人たちを支配する所長と看守たち。だが、ルークは権力に屈することなくあくまでクールに反体制の姿勢を貫こうとする。やがてルークは刑務所の牢名主的存在であるドラグライン(ジョージ・ケネディ)に認められ、囚人たちに尊敬の目を向けられる存在となっていくのだが─


まず一言。邦題が激しく作品の内容と合ってナイ。まるでバイオレンス映画のタイトルじゃねぇか。“女囚さそりシリーズ”みたいな陰惨でバイオレンス過多な作品かと思うわ。え?女囚さそりシリーズを知らない?まさかぁ。恨み節ですよ、梶芽衣子ですよ。梶芽衣子は日本版パム・グリアだと思うに一票!…あ、暴力脱獄の感想でしたね。女囚701号の感想じゃなかったですね。こりゃまた失礼。

気を取り直して。邦題のとんでもセンスに泣けてくる。インパクトはあると思うよ。語呂は激しく悪いけどな。デモ、内容と邦題が心底合ってないに一万票。原題の“COOL HAND LUKE”をうまく生かせなかったもんかねぇ。ミーもはじめて観た時は「全然、ルークは暴力的な脱獄なんかしてないしッ」と子供心に憤慨いたしましたわ。

つ〜か昔観た時はゆで卵50個のシーンとエロ姉ちゃんの泡まみれ洗車シーンくらいしか印象に残らなかったワケですが。観直して思った。脱獄ものなのにアクション的要素よりも宗教色の強い作品だと。囚人たちが繰り返し歌うイエス・キリストを慕うカントリーソング。そして古びた長椅子の上でぐったりと両腕を広げて横たわるルークの姿は十字架に架けられたキリストそのもの。おこちゃまの時には全然気付きもしなかったよ。やれやれだぜ。

とにかく泣かせる作品ですよ。まさか脱獄映画でこんなに泣くとは思わなんだ。個人的には「ショーシャンクの空に」より泣ける。どこが泣きポイントかと申しますと。まずルークのお母ちゃんが面会に来るシーンでグスングスン泣いた。このお母ちゃんがいい味出してるんだわ。ほんの数分のシーンなんだけど、お母ちゃんの言葉の一つ一つに愛情が感じられてKOROちゃん涙なくしては観れマセンでしたわ。ルークがバンジョーを手に歌うシーンも涙が止まらなかった。一言も心情を語らないんだけど、痛いほどルークの気持ちが伝わってくる。なんつ〜かルークってホントに不器用なヤツ。目的も見つからず、縛られること、権力に屈することを嫌って逆に窮屈な生き方をしている男。ラストシーンなんて号泣もんですよ、アナタ。

口数少なく、いつも皮肉っぽい笑顔を浮かべたルーク。戦争で得た勲章を暇つぶしと言い捨て、脱獄をすることで反骨精神を体現するルーク。惚れるわ。反骨魂の塊のようなルークは正に男の憧れの存在ではないかと。正真正銘の嫁入り前の女の子ちゃん(一部虚偽表現含む)のミーでも憧れちゃうわよ!惚れちゃうわよ!反骨精神を貫き通すのは難しいけれど、クールな笑顔を浮かべてそれを突き通すルーク。ポール・ニューマンはこういう役を演じるとホントにいいね。すごく光ってる。大して腕っ節は強くないがハッタリとド根性だけで乗り切ってやるぜってタイプの男が似合うねぇ。

そうそう、ドラグラインを演じたジョージ・ケネディも渋い演技っぷりでした。この作品での演技が評価されてアカデミー賞助演男優賞を獲得したのは驚きだけど。ジョージ・ケネディに助演男優賞を与えるなら、主演のポール・ニューマンにもあげてクレ。雨の中、天に向かって神に語りかける姿、そしてラストシーン。みすぼらしい○○の中で静かに語るルーク。もうKOROちゃん、号泣デス!鼻水垂らして泣きまくったわ。

ラストシーンでもルークはあの笑顔を浮かべていた。刑務所のみんながルーク・スマイルと呼んで愛した笑顔。きっと、こうするしか彼は○○になれなかったのかも知れない。哀しいけれど。
1967年/アメリカ/126分/監督:スチュアート・ローゼンバーグ
COOL HAND LUKE
2010.03.14記

「意思の疎通に失敗したようだな」
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