フランティック

ハリソン・フォード主演の巻き込まれサスペンス。

学会に出席するために妻のサンドラ(ベティ・バックリー)と共にパリを訪れたアメリカ人医師リチャード・ウォーカー(ハリソン・フォード)はホテルに到着して間もなく、妻のスーツケースを空港で誰かのものと取り違えてしまったことに気づく。そしてリチャードがシャワーを浴びているわずかな間にサンドラが何者かに連れ去られてしまう。妻が誘拐されたのはスーツケースの取り違えと関係するのか。異国の地パリで言葉も通じず、警察や大使館でも真剣に妻の失踪を取り合ってもらえない。スーツケースを探るとナイトクラブのマッチが見つかる。そこに書かれたデデという名前を手がかりに自ら捜索に乗り出すリチャード。しかしデデの自宅を訪ねると既に彼は何者かの手によって殺されていた。デデと繋がりのあるらしい謎の美女ミシェル(エマニュエル・セニエ)と出会うリチャード。彼女は何かを知っているようなのだが…


この作品は公開当時に劇場に観に行った。内容はうっすらしか憶えてなかったが、ミシェル役のエマニュエル・セニエの赤いミニスカワンピ姿が強烈に印象に残った。なんてキレイなお姉ちゃんなんだ!なんて粘っこい視線なんだ!彼女のスレンダーながら尋常でない色香を漂わせたその容貌に一目で参った。こんなお姉ちゃんを目の前にして変な気を起こさないリチャードは○○なんじゃないのかと疑ったよ。そんなワケでDVDをお安く見つけた時は小躍りシマシタよ。エマニュエル・セニエにまた会える!

ということで早速、鑑賞。そしたら、アナタ。ホントに見事に彼女の赤いワンピ姿以外は記憶にありマセンでしたヨ。リチャードの奥さんの顔さえ忘れてマシタよ。この奥さんが別に不細工ってワケじゃないんだが妙にシワシワで鑑賞意欲を激しく削いだ。上品だけどリチャードの奥さんにしちゃ老け過ぎじゃねぇか?という疑問が拭えず。デモ、エマニュエル・セニエのために頑張る。どうせサンドラはものの10分くらいで誘拐されるんだ。とことんエマニュエル・セニエを拝んじゃうぞッ。しかし、なかなか彼女が出てこない。ついでにリチャードの素人捜査がやたらとかったるい。負けるなKOROちゃん。

この作品は「スター・ウォーズ」のハン・ソロや「インディ・ジョーンズ」のインディ役で颯爽とした男を演じてきたハリソン・フォードが初めて情けないおっさん役を演じた作品ではないかと。ハン・ソロやインディ、「ブレードランナー」のデッカードみたいな役柄も好きだが、ミーはハリソン・フォードが情けないおっさんを演じているのもけっこう好きだ。「エアフォース・ワン」の常に困ったちゃん顔の大統領役とか。とにかくリチャードはかなり情けないおっさん。妻とはラヴラヴ気分のようだが、妻の方は意外と冷めてたりする。パリに着いた早々、妻が謎の失踪。相手にしてくれない警察に業を煮やして素人捜査をはじめるのはいいが、どこかオマヌケ。いかにも怪しそうなお兄ちゃんの話を真に受けてムダ金を使ったり、ミシェルを助けるために機転をきかして素っ裸で登場したのはいいが、股間をクマちゃんのぬいぐるみで隠してたり、屋根伝いに歩くシーンでは緊迫感よりもオマヌケ感が際立ってて手に汗握る前に笑ってしまいマシタ。

一般市民のおっさんが言葉の通じない異国の地で事件に巻き込まれる不安、恐怖は伝わってはくるんだが、サスペンス作品として観るとかなり弱い。悪の側にスケール感が感じられないのは惜しい。妻を連れ去った者の目的はストーリー終盤で判るんだけど、この辺りのシークエンスも妙に安っぽくて頂けない。事の重大さが伝わってこないのよね。ナイトクラブでのダンス・シーンは犯人側との取引でイニシアチブを握ろうとするリチャード達の優位性を表現してるようだが、どう見ても単にポランスキーがエマニュエル・セニエの肢体を粘っこく撮りたかっただけとしか思えない。いや、嬉しいですけど。ハイレグおパンツ姿を惜しげもなく見せてくれちゃったりしますし。

“フランティック”というタイトルがついてるワリにはさほど緊張感がバシバシ伝わってくる内容ではなかったケド、フランス語はまるっきりダメだし、腕力なんてからっきしナイ。あるのは妻愛しいという気持ちだけ。この気持ちだけで一人異国の地で奮闘するフツーのおっさんをハリソン・フォードが好演しており、彼のオタオタした姿がどうにも憎めないので、けっこう好きな作品。もちろんエマニュエル・セニエの妖艶な美しさも必見。せっかくパリを舞台にしているのにパリらしい風景があまり登場しないのが淋しいのとラストがやや呆気なさ過ぎる点が残念だが、全編を彩るエンニオ・モリコーネのスコアが非常にムーディで素晴らしい。ダンス・シーンで流れる“I've Seen That Face Before”がこれまたイイ。
1988年/アメリカ/120分/監督:ロマン・ポランスキー
FRANTIC
2009.03.29記

「自由の女神」
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