これからお前は[すべて]を失う
ホグワーツ魔法魔術学校の5年生になったハリー・ポッターがヴォルデモートの復活を信じない魔法省と対立しながらも仲間と共に闇の帝王へ立ち向かう姿を描くシリーズ第5作目。
ハリー・ポッター(ダニエル・ラドクリフ)はダーズリー家で退屈な夏休みを過ごしていた。日刊予言者新聞ではヴォルデモートが復活したというのに何の反応もなく、ロン(ルパート・グリント)やハーマイオニー(エマ・ワトソン)、名付け親であるシリウス・ブラック(ゲイリー・オールドマン)からは手紙一つ届かない。そして夜毎に見る謎の夢。長くて暗い廊下の先にある鍵の掛かった部屋。そんなある日。いとこのダドリー(ハリー・メリング)とハリーは突然現れた吸魂鬼(ディメンター)に襲われる。咄嗟に守護霊を呼び出して吸魂鬼を退けるハリー。何故マグルの世界に吸魂鬼が現れたのか。
しかし魔法省は未成年がマグル界で自己防衛以外の魔法の使用禁止を破ったとしてハリーにホグワーツからの退学処分を言い渡す。ダンブルドア校長(マイケル・ガンボン)の働きかけで魔法省での懲戒尋問を受けるまで退学処分は保留となり、ハリーはダンブルドアの命により迎えに現れたアラスター“マッド・アイ”・ムーディ(ブレンダン・グリーソン)らと共にある場所へ向かう。そこはシリウスの実家で今は“不死鳥の騎士団”本部。不死鳥の騎士団とはダンブルドアがヴォルデモートとその手先である死喰い人に対抗すべく創設した組織。ヴォルデモートが復活したことで活動を再開したのだ。ハリーはシリウスをはじめ、ウィーズリー家の人々やルーマス・ルーピン(デヴィッド・シューリス)、闇祓いの面々ら騎士団のメンバーとハーマイオニーに迎えられる。夕食の席上でシリウスからヴォルデモートがどこかに隠されているあるモノを探していると聞かされるハリー。そしていよいよ懲戒尋問の日。ダンブルドアや現場に居合わせたフィッグおばあさんの証言により、ハリーは無罪となり退学は免れるが何故かハリーに対するダンブルドアの態度は冷たかった。
新学期がはじまり、学校に戻るハリー達。しかし日刊予言者新聞を信じる者達はヴォルデモートの復活を訴えるハリーに対して懐疑的な目を向ける。同じ寮のシェーマスさえもハリーの言葉を信じず、ハリーは落ち込むばかり。その上、ハグリッド(ロビー・コルトレーン)の姿は見えず、闇の魔術に対する防衛術の教授には懲戒尋問でハリーを有罪にしようとした魔法省の役人ドローレス・アンブリッジ(イメルダ・スタウントン)が就任する。アンブリッジはダンブルドアが私設軍団を組織して魔法省と抗争するつもりだと考えている省から送り込まれた人物だった。私設軍団阻止のために授業では一切魔法を教えようとしないばかりか、次々に教育令を発して生徒達を締め付けるアンブリッジに対抗するべく、自分達で闇の魔術に対する防衛術を学ぶしかないと考えたハリー達はダンブルドア軍団を結成して極秘裏に訓練を積んでいくが…。
実は全7巻ある原作の中でも第5巻のこのお話が一番好きじゃなかったりする。ハリーは終始イライラしっぱなしだし、アンブリッジの意地悪さはエゲツなさ過ぎるし。ダンブルドアの言動も巻の最後まで真意が判らなくて「どうしちゃったんだよぅ」と戸惑いっぱなしでしたから。それにラスト。おったまげた。そんなバカな!信じられヘ〜んッ!みたいな。巻を重ねるにつれ暗さを増すばかりの原作ですが、ミーは暗いお話はキライじゃないのよ。デモ、この作品は好きになれなかった。なので映画版もあんまり乗り気じゃなかったのだが毎度のことながらハーマイオニーちゃんラヴのK元くんの要請により出陣。ところがどっこい。映画版は予想以上にオモロかったよ。
まず冒頭のペチュニアおばさんのミニスカ姿に度肝を抜かれる。吸魂鬼に襲われ、命からがら逃げ切ったハリーを襲う新たな刺客かとオモタよ。それほどにペチュニアおばさんの太ももの威力は甚大。びっくらこきマシタ。そんなKOROのびっくら度はおいといて。
前作から監督が替わったこともあるのか前ほど心理描写が薄っぺらくない。ハリーの中に巣食う怒りの感情。ダンブルドアの不可解な態度。自分だけ何も知らされない焦燥、孤独感。そんなハリーが仲間の気持ちを知り、一人じゃないと気付かされる瞬間。けっこう丁寧に描かれているワケだ。原作もあんまり好きじゃないと言いながら最後はしっかり泣かされたワケですが映画版はさらに泣いちゃったよ。それとアンブリッジの数々のいじめがコミカルに描かれているのも救われた。ホント、あのおばはんの胸糞悪さは半端じゃないっすから。原作ではそれはネチっこくアンブリッジの生徒いじめの様子が描かれていて、精神衛生上ヨロシクなかった。映画版でのライトな描写に胸をなで下ろした。あ、もちろんフレッドとジョージが相変わらずカワイイのがKORO的に一番オイシイところに決まってますわよ!ついでに派手なコトしてくれちゃうし!もし映画版で彼らのあのシーンがばっさり削られてたら製作者全員に闇の魔術をかけていたトコロです。ふっ、アンタら命拾いしたな←誰だ
しかし。ネビルのエピソードがかなり削られていたのは承服しかねる。ネビルのエピソードは重要なんだって!原作ではドビーが教えてくれる○○の部屋の存在を映画版ではネビルが偶然見つけるようになってるケド、そんなシーンはいいんだよ!ネビルの両親について、ネビル自身について掘り下げて描いてくれよ。チョウ・チャンとの○○シーンなんて要らないから。マジであのシーンは要らんわ。長すぎるわ。初めてにしちゃクドくて長いわ。いつからハリポタ映画は青春初恋物語になったんだよ。前作では少しは可愛く見えたチョウ・チャンだが今作では全くカワイクない。髪形のせいなのか太りすぎたのか。原作では美少女なのに映画版のチョウ・チャンは南海キャンディーズの静ちゃんにしか見えなかったヨ。ったく。チョウ・チャンはどうでもいいのよ。
KORO的には前作よりも各々のキャラクターの心理描写が丁寧に描かれているし、何より魔法省内部を見事に再現しているトコロに素直に感動。クライマックスはチョウ・チャンとの○○シーンにムダに時間を割いたせいか(←しつこい)、やや希薄になっておりますがなかなかのもの。デモ、映画版ではあの人がどれだけスゴイ人かというのがシリーズを通してあまり描かれていないので原作を未読の方は「アンタはヨーダだったのかよ!」とツッコミたくなるかも。
加速度的に暗く、重たいお話になってくるこのシリーズ。けれどまだハリーは知らない。あの人の心の奥底に秘めた想い。そしてある人の未来を見据えた言動と深遠なる言葉の本当の意味。お次の「ハリー・ポッターと謎のプリンス」でハリーが直面する出来事は今まで以上に彼を苦しめるのです。
2007年/イギリス・アメリカ/138分/監督:デヴィッド・イェーツ
HARRY POTTER AND THE ORDER OF THE PHOENIX
2009.01.03記