ハリーがヴォルデモートとの宿命の対決へと始動するシリーズ第6作目。
人間界のロンドン市内を傍若無人に飛び交い、橋を破壊する不気味な黒い影。ヴォルデモートの支配力が魔法使いの世界だけでなく、人間界にも影響を及ぼすほど強まってきたのだ。そしてドラコ・マルフォイ(トム・フェルトン)の母ナルシッサ(ヘレン・マックロリー)とセブルス・スネイプ(アラン・リックマン)との間で交わされる“破れぬ誓い”。ダイアゴン横丁でハリー・ポッター(ダニエル・ラドクリフ)、ロン(ルパート・グリント)、ハーマイオニー(エマ・ワトソン)が目撃したドラコの不審な行動。ハリーはドラコが死喰い人になったのではと疑うが2人は聞く耳を持たない。
一方、最終決戦が近づいていることを察知したダンブルドア校長(マイケル・ガンボン)はヴォルデモートの鉄壁の守りを解く手掛かりを握っていると思われる元ホグワーツの教授のホラス・スラグホーン(ジム・ブロードベント)を魔法薬学の教授として再びホグワーツに迎え入れることにする。
やがてはじまる新学期。スラグホーンのはじめての授業に遅刻して準備が整っていなかったハリーは古い教科書を借りることになるが、それには「半純血のプリンス」という署名があり、教科書の間違いを指摘しているだけではなくプリンス自身が考案したと思われる呪文の数々が書き記されていた。プリンスの書き込みのおかげでたちまちハリーは魔法薬学でトップの成績となるが、ハーマイオニーの機嫌を損ねることになってしまう。
そしてホグワーツの生徒達はヴォルデモートとは違う敵と戦っていた。それは恋の病。ハリーはロンの妹ジニー(ボニー・ライト)にますます惹かれていくが、彼女はディーン・トーマスと恋人同士。ロンはラベンダー・ブラウンの猛烈なアタックに圧され、人目も憚らずにいちゃいちゃする。ハーマイオニーはそんなロンの様子を見て嫉妬に苛まれ爆発寸前。しかし生徒達がロマンスに浮かれている中、、ある目標を達成することだけに集中する生徒がいた。たとえそれがホグワーツを破滅させることになっても─。
2008年秋に公開予定だったのに配給元のワーナー・ブラザーズの大人の事情で2009年7月に延期された当作品。原作の発表は2005年、日本語版は2006年。発売当初に読んだが、さすがに3年も前なんで忘れちまったぞ。しかし、それでもかなり端折られてるって気がした。いきなり冒頭から違うぞ。なんだ、このムダなハリーの思春期ぶりはッ。全然、人間界にもヴォルデモートの支配力が及んでいる危機感が感じられマセンわ。カフェでせっせと口臭予防スプレーを吹きかけてるハリーを見せるより、しっかりイギリス首相と魔法大臣コーネリウス・ファッジの秘密の面会シーンを見せた方が効果的だったんじゃないのかなぁ。色んなトコで書かれてたが、とにかくムダに思春期で恋に浮かれた青春学園映画魔法学校編となってますよ。これがもう、クドい。ロンにお熱のラベンダー・ブラウンがウザい、ウザい。「アタチのウォンウォン(はぁと)」ですからね。いつからロンは犬になったんだ←それは名犬ウォン・トン・トンだ。そして古い。
154分と長尺なのにストーリーが進むのは後半の30分くらい。どんだけスロースターターなんだッ!思春期で覚えたてのワリに遅いな、おい!…あら、ヤダ。いきなりお下劣発言しちゃったわ。スマソ。気を取り直して。とにかく。全然、人間界をも巻き込む世界の終わりが近づいているってカンジが致しませんよ。ヴォルデモートの不気味な影が全く感じられない。冒頭でのロンドンの橋が落ちるシーン以降は人間界を描くことをすっぱり忘れておりマス。そして何故タイトルが「謎のプリンス(原題:半純血のプリンス)」なのかというのが全く描ききれていない。短い台詞一言で済ませちまいマシタからね。アナタ、このプリンスの存在は非常に重要だっていうの!最終巻への大きな伏線なんだから!
前作では割と主要人物の心理描写が巧く表現されてたように思ったんだけど、この作品は全然ダメ。情感がまるでこもってない。ハリーをはじめ、ロン、ハーマイオニーの演技も今までで一番ぎこちなかったように感じた。原作でも3人の恋の悩みは確かに描かれてはいたけど、ここまでクドかったかなぁ。
文句ばっかり書いてますが、なんといっても不満はフレッドとジョージの出番が少ないことですわ。そして幼少期はともかくホグワーツ時代の○○・○○○が「秘密の部屋」の時とはうってかわって、ちっともKORO好みじゃないってことですよ!アンタ誰だ。ジャニの山○○介か。それとも「オーメン2」のダミアンか。出番は少ないが、重要人物だろうがッ!もっとキッチリとキャスティング考えろよッ。あ、11歳時の彼は可愛いですよ。レイフ・ファインズの実の甥っ子か。へ〜へ〜へ〜。
第6作目の最大の鍵となる例のアレの存在も描き方が雑。ダンブルドアとハリーがいかに苦心してそれを見つけ、○○したのか、そして徒労とも思えたその行為が実はどんな意味を持っているのか。ハリーがそれを○○するために旅立とうとしている冒険が困難で危険なものかが伝わってこないのも残念。原作では号泣して「ウソだと言って!悪夢だと言って!頁を捲ったら、『○○だかと思ったかね?ハリー』と言ってくれるよね!」とワンワン泣きながら読んだ件も真に迫ってくるものがなかった。どんだけ情感描写が下手クソなんだ。
さて最終巻の映画化は前後編に分かれるらしいが、どうなることやら。とにかくかなりの部分が暗いし、ヘコむし、疑心暗鬼だしでストーリーが大きく動くのはかなり物語も後半になってから。今作をなんとも一本調子で起伏のないストーリーにしてしまった監督のデヴィッド・イェーツには荷が重たいのではないかと今から危惧する次第。
2008年/イギリス・アメリカ/154分/監督:デヴィッド・イェーツ
HARRY POTTER AND THE HALF-BLOOD PRINCE
2009.08.02記