ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ

誰もが、自分の“カタワレ”を探してる…。

アメリカ各地を旅する売れないロック・シンガーのヘドウィグ(ジョン・キャメロン・ミッチェル)は共産主義体制下の東ドイツで男の子ハンセルとして生まれた。しかし憧れの国アメリカに渡る際にアメリカ兵ルーサーと結婚するために受けた性転換手術は失敗。股間には「怒りの1インチ」が残ってしまう。アメリカに渡るも、最初の結婚記念日の日にルーサーはヘドウィグの元を去ってしまう。折りしもその日はベルリンの壁崩壊の日。絶望の中、昔抱いたロック・シンガーの夢を思い起こし、バイトで身を繋ぎながら韓国兵の妻たちを引き連れバンドを結成する。

そんなある日、やはりロック・スターに憧れる17歳の少年トミー(マイケル・ピット)に出会う。ヘドウィグはトミーを自分の失われた半身だと信じ、愛情を注ぐがトミーもまたヘドウィグの股間の手術痕を知ると逃げ出していくのだった。しかも彼女が作った曲を全て盗んでいき、たちまちヒットを飛ばし人気絶頂のロック・スターに登りつめていた。ヘドウィグは自らのバンド「アングリーインチ」を引き連れ、トミーの全米コンサートを追いかけながら愛を捜し求めていく─


この作品は公開当時、わざわざ博多まで観に行ったなぁ。映画友のセイウンおすぎサマをムリヤリ誘って張り切って観に行ったなぁ。そして幾年月。今さらながら感想を書いてみる。もう軽く4、5回は観てるんだが、今までどうして感想を書かなかったのか。単に忘れてただけか?よくワカラン。しかし、なんとこの感想でちょうど500本目。一応、記念だ。400本目の際はうっかり忘れて「トーマス・クラウン・アフェアー」の感想なんか書いちゃいマシタからね。「未来世紀ブラジル」を書くつもりだったのに!迂闊。とにかく。やはりここは好きな映画の感想を書くしかないということで当作品。

もうしょっぱなから、ヘドウィグの生き様に涙ですッ。裏切られ、傷つき、それでもなお純粋に愛を求める彼女の姿に号泣ですッ!彼女の強さと寂しさが同居した眼差しがなんともいえない魅力ですヨ。おかま映画とか思っちゃいけません。純粋に愛を捜し求める物語なんですよッ。愛は創造なの!おかまは強いのよ、アナタ!←セイウンおすぎサマが鑑賞後に叫んだ金言

あぁ、いきなり興奮した。落ち着けKOROちゃん。主演のジョン・キャメロン・ミッチェル。そこらのロック・シンガーより断然、歌が上手い。ロック魂をびんびん感じさせる歌いっぷりがたまりません。それと時々壮絶な表情をするが女性と言われてもなんら違和感ない風貌に驚いた。特にトミーと一緒にいる時の彼女の可愛さったらない。洗濯物が沢山干された部屋でのラブシーンの美しさは必見。その後のシチュエーションは悲しすぎますが。トミーのアンポンタンッ!意気地なし!ヘドウィグは全てを捧げてるんだ!アンタも彼女の全てを愛せよ!とスクリーンに向かって絶叫しそうになりマシタよ。あまりにヘドウィグが健気なもんですから、かなり感情移入しちゃいマシタ。

トミーを演じるマイケル・ピットはぽよよんとした体型だし、そんなに魅力的と思えなかったが実はゲイ受けする風貌らしい。へ〜へ〜へ〜。ミーはスキシプ役のスティーヴン・トラスクに萌えマシタ。

とにかく作品中に流れるナンバーが全てイイ。ノリノリな曲もスローな曲も。“アングリーインチ”も好きだけど、やはり“愛の起源”。マジで名曲。ミーはこの作品を鑑賞後、即サントラを購入。今でも時々、“愛の起源”を聴いては号泣しております。神話的な歌詞と共に曲が流れる時の絵が今でも強烈に印象に残っております。

運命に翻弄されながらも愛を求めて生きていくヘドウィグ。心と身体の痛みなしには語れない自身の物語をパワフルに歌い上げる彼女の姿は一種の魔力を持っている。どぎついメイクも泣き崩れてぐしゃぐしゃになった顔さえも醜いどころか美しい。彼女の圧倒的な存在感故なのか。どのシーンも彼女の魅力が溢れているけれど、KORO的に心に残っているのはメンス・フェアでのワンシーン。たった一人しかいない観客に優しく語りかけるように自分の半生を語る彼女に母性を感じてしまう。

夜の路地。一人だけれど孤独じゃない。そんなヘドウィグの心情が伝わってくるラスト。彼女の旅は終わったんだな、と思った。
2001年/アメリカ/92分/監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル
HEDWIG AND THE ANGRY INCH
2009.04.27記

「私の股間も愛してッ」
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