クリムゾン・タイド

ミサイルを発射するべきか否か。対立する潜水艦艦長と副艦長。潜水艦という密室を舞台にジーン・ハックマン、デンゼル・ワシントン2人の名優が静かな火花を散らす。

ロシアでチェチェン紛争をきっかけにした超国粋主義者と軍の反乱勢力が結託したクーデターが勃発。反乱軍はシベリアの核ミサイル基地を占拠する。アメリカと日本は核攻撃の危機にさらされ、オハイオ級原子力潜水艦アラバマに出撃命令が下る。

アラバマの艦長で実戦経験豊富な叩き上げのラムジー大佐(ジーン・ハックマン)は、ハーバード大出身のエリートであるハンター少佐(デンゼル・ワシントン)を新たな副長に迎え、出港する。しかし訓練方針や危機にストレスを感じる乗員たちへの対処の食い違いなどから2人の溝は徐々に深まってゆく。やがて目的海域に達し、敵潜水艦の影を捉えたアラバマは臨戦態勢に入る。しかしアメリカ国防総省からの通信が入ったその時、敵の魚雷攻撃が艦をかすめて爆発。ミサイルを発射するのか中止するのか指令がはっきりしないまま通信が途切れてしまう。直ちに攻撃すべきだと主張するラムジーに対し、ハンターは命令の再確認を強く求める。艦内には異様な緊張感がみなぎる。艦長への忠誠か副官のモラルに与するか。激しく揺れる乗組員たちの心。ミサイル攻撃するか否か。攻撃が遅れればアメリカ市民を無為に死なせることになってしまう。しかし攻撃が誤りなら、それは全面戦争の引き金となってしまう。引き続く敵機の攻撃により損傷を受けて沈没の危機にさらされる中、ついにミサイル発射命令を巡り、ラムジーとハンターの対立は頂点に達してしまう。


ロシア内部の反乱が世界戦争にまで発展しかねないという状況で出動したアメリカ軍の潜水艦内部で繰り広げられるドラマ。ジーン・ハックマン演じる艦長と、かたや副長のデンゼル・ワシントン。彼らのミサイル発射命令を巡る対立がメインテーマである当作品は「男なら観とけ、押さえとけ」な非常に男臭い作品であります。ハンス・ジマーによる音楽も男臭い物語を盛り上げるのに功を奏しております。「バックドラフト」での感動的な音楽にも負けずとも劣らない出来。しかしストーリー序盤で潜水艦内のキッチンで起きた火事騒ぎの時まで感動的なBGMが流れたのには驚いた。これは「バックドラフト」潜水艦版かとオモタよ。

敵機からの攻撃を受け混乱状態の中、途中で途絶えた通信のせいでミサイル発射命令が正式なものかどうか判断がつかず2人の意見が分かれてしまう。あくまで発射しようとする艦長に対抗する副長。単にミサイルを発射すべきか否かで対立しているワケではないのです。ミサイル発射に反対している副長も正式な命令であれば迷わずミサイルを発射するでしょう。2人の対立の原因はルールをどう解釈するかということ。些細な解釈の違いが、もしかしたら世界を破滅させるような大きな戦争を引き起こすかもしれない怖さをこの映画は描いてる。

ま、KOROはそんなメインテーマよりも老いて渋みが増したジーン・ハックマンの重厚な演技っぷりに萌え萌え。彼が演じるラムジー艦長が乗組員に向けて演説するシーンはチビりそうになるほどカッコヨイ。降りしきる雨の中、愛犬を連れて乗組員が整列する前に現われたラムジー艦長。「アヒルどもよ、ロシアでトラブルだ。(中略)目的はただひとつ。祖国を守るためだ!我々は国防の最前線に就き、同時に最後の防衛線となる。…諸君に望むことは最善の努力だ。それが出来ない者は、空軍に入ってもらいたい」…痺れるな、おい。乗組員の笑いが起こる中、またしてもハンス・ジマーの感動を誘う音楽が流れ、なおも続く艦長の演説。映画がはじまって15分足らずでミーのハートはラムジー艦長に奪われマシタよ。「この船の名前は何だ!」、「アラバマであります!」、「気合を入れろ!」、「ゴーバマ!」、「ゴーバマ!」

うひょ〜ッ!カッコよすぎるぞ!痺れるぞ!ま、内容は大して立派なコトを言ってるワケではなく乗組員を士気を上げるためのものなんだけど、正真正銘、女性のミーが観ても鳥肌が立つくらいに名演説。脇で微笑むハンター少佐の表情もイイ。エリートの新任副艦長が叩き上げのベテラン艦長がいかにして部下の心をつかむのかを目の当たりにして「やるな」というカンジでふと浮かべてしまう笑み。そのちょっとした演技で見事にハンター少佐の心情を表わしているデンゼル様にも萌え。ラムジーとハンター。2人が対峙するシーンはどのシーンも静かな緊張感を漂わせていて見応えあり。何気ないやりとりの中で交わすさり気ない視線にお互いのやり方に対する不満や疑問がチラ見えしちゃうのよ。ホント観ているだけで脂汗ですよ。そうそう、出番はそんなに多くないながらも印象的な演技を見せるヴィゴ・モーテンセンがこれまたいい。艦長側と副官側、双方に挟まれ決断を迫られるウェップスがラスト近くで拳を握り締めるシーン。泣きますよ。むせび泣きですよ。背中で演技する男に感涙しましたよ。

ラスト間際で葉巻の煙を燻らせながら部下達の敬礼に応え、静かに○○ラムジー。哀愁溢れる表情に爺好き魂が激しく揺さぶられるシーン。締め方も素晴らしいですよ。対立した2人が見せる笑顔。生き方や方針の違う2人の男がお互いを認め、言葉少ないながらも理解し合って静かに別れていく姿に素直に胸を打たれる。ラムジーが発する短い台詞にそんな心の内が見事に表現されていてイイ。
1995年/アメリカ/115分/監督:トニー・スコット
CRIMSON TIDE

「リピッツァー種はポルトガル産かスペイン産か」
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