男は走り、女はためらうマンハッタン発、愛の終列車
クリスマス・イブのニューヨークの書店で出会った中年の男女。通勤途中の電車で再会した2人はお互いに心惹かれ…
建築技師のフランク(ロバート・デ・ニーロ)と主婦のモリー(メリル・ストリープ)はクリスマス・プレゼントを買うために立ち寄った書店で出会った。身体がぶつかり合いお互いの荷物を床にぶちまけてしまうというありふれた出来事だったが、電車の中で再会したことから互いに心に残るものを感じてしまう。やがてフランクは通勤電車の中でモリーの姿を探すようになり、ようやく見つけた彼女にこれからはいつも同じ電車に乗ろうと提案する。毎日のように顔を合わせ、ランチを一緒に取る2人。惹かれあう2人だったがお互いに家庭のある身。あくまでも精神的なつながりで会っても身の上話をするだけの仲だったが、やがて相手に対する想いは抑えきれないものになっていく。
ロバート・デ・ニーロ、メリル・ストリープ2人の名優の演技が光る大人の純愛映画。
中年男女の純愛をデ・ニーロとメリル・ストリープが意外にもあっさり演じております。こってりとんこつ味の演技派2人がいつもの曲者ぶりを最後まで発揮することなく平凡な会社勤めのおっさんと病に臥せる父の看病と家族の世話に明け暮れるフツーの主婦を淡々と演じております。まこと奇ッ怪なこともあるもんだ。一番の驚きはこんなこそばゆいロマンスものをミーが鑑賞したってことですけど。ずいぶん昔に観たので何が目的でこの作品を観たのか憶えてナイ。ハーヴェイ・カイテル見たさだったのか?よくワカラン。
デ・ニーロとメリル・ストリープが共演と聞くとそれだけで胸焼けしそうなカンジではありますが、当時30代半ばのメリル・ストリープは現在のどすこいで嫌味たっぷりなおばはん振りとは程遠く、柔らかい美しさのあるおばちゃんです。中年男女の2人のデート模様はなんとも歯がゆいといいますか、見ているこっちがやきもきしちゃうような純情ぶり。あと一歩が踏み出せません。もうお互い分別のつく年齢といえる2人なのに駅でモリーを待つフランクの様子やデートに何を着ていくか迷うモリーの姿はまるで10代のよう。この作品を観た当時、正真正銘の10代だったミーの方がこっぱずかしくなるほどデシタよ。
しかし、やがて2人の仲がフランクの妻アンに勘付かれる。モリーとの関係を白状したフランクにアンが突きつける言葉。その言葉はまだまだ少女だったミーにも痛いほど判る気持ちでした。だからこそ、許せないっていう感情。
どこまでも甘く切ないラブストーリーです。正直言えばどこか現実離れしたストーリーとも言えますが、主演2人が非常に丁寧に演じてるので意外と違和感はありません。いつもならその演技のうまさが鼻についてしまうことが多々ある2人だけど、デ・ニーロが普通のおじさんを普通っぽく演じてるし、メリル・ストリープも「うまいでしょ?ふふん」ってカンジもなく、そして繊細な美しさをまだまだ保っています。
2人のやってることは不倫といってしまえばそれまでなんだけど、なんか責められないのよ。偶然の出会いから恋におちちゃうなんて憧れのシチュエーションじゃないっすか。2人が恋におちていく過程が自然で観ていて素直に惹きこまれマシタよ。そして切ない。それだけにラストシーンは蛇足かも。フランクとモリーの年齢に近づいてしまった今なら、2人の、特にモリーの気持ちをもっと理解出来るのかなぁ。
1984年/アメリカ/106分/監督:ウール・グロスバード
FALLING IN LOVE