ゴッドファーザー

フランシス・フォード・コッポラ監督の代表作であると共に今もこの作品を越えるマフィア映画がないと言える不朽の名作。

第二次世界大戦が終結した1945年。夏の眩しい日差しを受ける高級住宅街の一角。コルレオーネ家の屋敷では主人であるドン・ヴィト・コルレオーネ(マーロン・ブランド)の娘コニー(タリア・シャイア)の結婚披露宴が盛大に執り行われていた。太陽の下で老いも若きも大いに飲み、陽気に唄い踊っている中で主人のドン・コルレオーネはブラインドの下ろされた書斎で密談を交わしていた。表沙汰には出来ない問題を抱え、ドンの庇護を求めてきた客に対して誠実に対応するドン。傍らでその様子を静かに見つめているのはコンシリオーリ(相談役)のトム・ヘイゲン(ロバート・デュヴァル)。

宴もたけなわの中、父親であるドンの反対を押し切り大学を中退して従軍し、英雄として復員してきた三男のマイケル(アル・パチーノ)が恋人のケイ(ダイアン・キートン)を伴っい、久しぶりに帰宅する。マイケルから粗野だが兄弟思いの長男ソニー(ジェームズ・カーン)、純粋で気弱な次男のフレド(ジョン・カザール)、血は繋がらないが兄弟同然に育った弁護士のトムを紹介されるケイ。そんなところへ突如現われた人気歌手のジョニー(アル・マルティーノ)に驚いたケイに種明かしをせがまれたマイケルは率直に父のヴィトがマフィアのトップ、すなわちゴッドファーザーであることを明かす。だが、マイケルは家族は愛してはいるが、稼業には無縁であることをケイに告げる。父もまたマイケルが堅気の生活を送ることを望んでいた。

しかし、ある夜ケイと映画を観た帰りに見かけた新聞の記事にマイケルは驚く。そこには父であるドン・コルレオーネが狙撃された記事が載っていた。この瞬間からマイケルはマフィア同士の抗争に否応なく巻き込まれていくことになる─


冒頭のコニーの披露宴の描写から圧倒されっぱなし。華やかな音楽、豪華な屋敷。そんな賑やかさの中、屋敷の奥の書斎で行われる密談。マーロン・ブランド扮するドン・コルレオーネの静かで重厚な存在感に思いっきりやられる。なんだ、この存在感はッ。エラい役作りしてるじゃねぇかッ。…「地獄の黙示録」でもこれくらい気合が入ってりゃ、コッポラも心労で倒れなかったと思うのだが。

アル・パチーノや鉄砲玉アニキのジェームズ・カーンも素晴らしいが、やはりなんといってもマーロン・ブランド演じるドン・コルレオーネの存在感が群を抜いて際立ってる。声を荒げるシーンなんて一度もないのにド迫力オーラ満載。怖いっていうよりもとにかく頼りになるっての?正にゴッドファーザーですわ。ホント、毎晩祈りそうな勢いでファーザーですわ。

父を尊敬はしているがマフィア家業を嫌っていたマイケル。しかし、父の狙撃事件をきっかけに否応なくマフィアの世界へと足を踏み入れていくことになってしまう。そのあたりの件も非常に丁寧に描かれていて、とにかく目が離せない。3時間という長丁場にも関わらず、重厚なストーリーと作りこまれた人物設定にすっかりハマり、最後まで一気に観てしまう。とにかく静かだがパワーのある作品。

マフィア世界にどっぷりと浸かっていくマイケルの苦悩、性格の異なる2人の兄との関係、マイケルの恋人ケイとの別れと再会。どのエピソードも重厚かつ緻密に描写されており見応え満点。どのシーンも印象深いが(ソニーの壮絶な○○とか)、特に印象に残っているのは葬式のシーン。あの時のマイケルの目。ゾクゾクした。ニーノ・ロータによるテーマ曲も、もちろん素晴らしい。哀愁を帯びた旋律を聞いただけで胸にズシンとくるものがある。

1972年の作品だけど、今でも鮮明に記憶に残っている作品。そして何度観ても唸る。確かな時代考証のもと、紡がれるその壮大なストーリーに。そしてマフィア映画でありながら、格調高さを醸し出す映像美に。ギャング映画とか犯罪をテーマにした映画ではなく、人間ドラマの傑作。
1972年/アメリカ/175分/監督:フランシス・フォード・コッポラ
THE GODFATHER

「映画では3度破産したがワインで儲けて大富豪のコッポラ」
アイ★ラブシネマTOPに戻る