本当のヒーローって?ダスティン・ホフマンとアンディ・ガルシア共演のちょっぴりダメな男のほろ苦くて甘くて、少しだけ意地悪な物語。
コソ泥のバーニー(ダスティン・ホフマン)は飛行機事故の場に遭遇し、心ならずも人命救助することに。悪態をつきながらもバーニーは乗客たちを機外へ運び出すが、現場へ片方の靴を残したまま名前も告げずに現場を立ち去る。しかし、ちゃっかり乗客の一人である人気TVリポーターのゲイル(ジーナ・デイヴィス)の財布を抜き取ることは忘れない根っからのコソ泥バーニー。名も告げずに去った命の恩人を探し出そうと賞金100万ドルをつけてTVで大々的に呼びかけるゲイル。名乗り出てきたのはハンサムな青年ジョン(アンディ・ガルシア)。彼はバーニーの靴を事件の直後にバーニー自身から譲り受けていたのだ。ジョンはホームレスの身の上だが一躍マスコミからヒーローとして祭り上げられる。TVでホームレスの救済を訴え、多くの人々に感銘を与えるジョン。そしてゲイルとの間には愛情が芽生え始める。その頃、本当のヒーローであるバーニーは盗んだカードが元で警察に捕まっていた。
ダスティン・ホフマンがケチなコソ泥役をひょうひょうと演じててイイ。ホント、名人芸。ケチでずるくてだらしないバーニー。だけど、なんだか憎めない。そんな男を見事に演じておりました。ちょっとだけ「真夜中のカーボーイ」のラッツォを思い出した。ま、風貌だけですけどね。中身はかなり趣が違いますから。「真夜中のカーボーイ」は大好きな映画なんだけど、なかなか感想が書けないのよ。ラストを思い出すとむせび泣いちゃって。ああ〜ん、ラッツォ〜ッ!フロリダの空は青いんだぜ!マイアミの浜辺は燦々と太陽が照りつけてるんだぜ!うわ〜んッ!いかん、大幅に話が逸れた。「靴をなくした天使」の感想を書いてるんだった。軌道修正。
え〜と。ジョンに一言。アンタはシンデレラ男版か。以上。うわ、終わっちまったよ!なんでだよ!小粒な作品だけど、けっこうオモロかったんだぞ?他になんか感想浮かばないのかよ!バーニーのよれよれコートがステキでした。コロンボじゃねぇんだよ。よれよれコートの着こなしのこととかどうでもいんだよッ。
KOROちゃん、根っからのおバカ映画好きでB級映画大好物人間だから、この手の社会問題を内包したかのようなお話って実はジャンル外なのよね。ダスティン・ホフマンが好きだから観ただけだし。デモ、頑張って書くぞ。とにかく。バーニーは人助けなんかするつもりはなかったんだと思う。そんな殊勝な人格ではない。ズルくてだらしなくて人の為に働くなんて大嫌いな人間。でも、そんな彼も一人の息子の父親。妻とはとうに別れてしまったけど息子のジョーイはなんのかんの言っても愛している。事故の現場で息子と同じ年頃の少年が父親を探し求めている姿に自分の息子を重ねてしまい、つい心を動かされて日頃の彼からは考えられないような行動を取ってしまっただけなのよね。
そこから起こるドラマはなんとも皮肉というか斜にかまえた描き方というか。ヒーローになんかなりたくないバーニーだけど、100万ドルの報奨金が出るとなれば話は別。でもみんなハンサムで優しいジョンがヒーローの方がいいんですよ。ゲイルとジョンもお互い恋に落ちてしまうし。誰もバーニーの言う事など信じてるワケがない。
ジョンもヒーローになりたかったワケじゃない。100万ドルに思わず目が眩んでしまっただけ。ほんの出来心から小さなウソを吐いてしまったジョン。小さなウソのつもりだったのに、誰も疑わずに心ならずもヒーローに祭り上げられてしまう。作り上げられたヒーロー。最初は必死にヒーローを演じていたジョンがやがて生来持っていた人格が呼び覚まされたかのようにまるで聖人のごとくなっていく。本当のヒーローは誰にも信じられずに檻の中。贋物ヒーローはまるで本当の天使のよう。なんて皮肉たっぷりなんだ。贋物ヒーロー、ジョンが静かに、しかし力強く訴える「我々は全員がヒーローになれるのだ」という言葉に素直に心を打たれちまいマシタよ。アンタ、大統領戦に立候補しろ。
しかしジョンは徐々に罪悪感に苛まれ始め、ある日とんでもない行動に出ちゃうワケで。その後の展開がまたちょっぴりひねくれててヨロシイ。この作品は自由とか正義を重んじるアメリカ社会を少々斜めから見た少しアイロニーな作品。“NO MORE HERO”な時代にヒーローって何?と問い掛けているような気がする。バーニーもみんなのヒーローではないけれど、一番ヒーローだと思って欲しい人のヒーローにはなれたしね。
1992年/アメリカ/118分/監督:スティーヴン・フリアーズ
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