紅の豚

カッコイイとは、こういうことさ。

1920年代の世界大恐慌時のイタリア・アドリア海を舞台に、空賊とそれを相手に賞金稼ぎで生きる豚の物語。第一次世界大戦後の動乱の時代に生きる男達の夢とロマンを描いたアニメ。

第一次大戦時、イタリア空軍のエース・パイロットだったポルコ・ロッソはある出来事をきっかけに自らに魔法をかけ、豚として生きることを選ぶ。ポルコの古くからの飛空挺仲間であるホテル・アドリアーナのマダム・ジーナは彼の魔法が解かれる日を待ち続けていた。今ではアドリア海にはびこる空賊を捕らえる賞金稼ぎとして活躍するポルコを煙たがる空賊達はポルコ打倒のためアメリカのパイロット、ドナルド・カーチスを雇い入れる。カーチスはエンジンの不調につけこんでまんまとポルコ撃墜に成功する。命からがら助かったポルコは大破した愛機とともに馴染みの修理工場ピッコロ社があるミラノへと向かう。そこで出会ったピッコロの孫娘フィオに愛機の修復を申し込まれ、はじめはにべもなく断るポルコだったがフィオの並々ならぬ情熱と知識に負け承諾するポルコ。しかし愛機の修復を間近に控えたある日、政府の追及がピッコロ社にまで及ぶ。ポルコはテスト飛行もなしにフィオと共にミラノを飛び立つのだが。


カッコイイとは、こういうことさ。く〜っ、まさしくその通り!え?豚がカッコイイかですって?カッコイイに決まってるだろ。サイコ〜だよぅ。男のロマンってこういう時に使うんだよぅ。ああん、ポルコに惚れた。もうポルコの台詞がどれをとっても素晴らしい。痺れるぅ〜。憧れるぅ〜。子宮が疼くわよッ。心配するマダム・ジーナに「飛ばねえ豚はただの豚だ」。フツーに考えるとそりゃそうだってカンジだけど、このシーンはたまらん。カッコ良すぎる。身悶える。

「風の谷のナウシカ」、「天空の城ラピュタ」、「となりのトトロ」、「魔女の宅急便」と少女が主人公の作品を多く手がけてきた宮ア駿監督が珍しく中年男の夢を描いた作品。子どもの頃から空を飛ぶことに憧れてきた監督自身の夢を描いた作品。ハードボイルドでちょっぴり複雑な人間模様、三角関係。それまでにもそれからにもない男臭い物語。元々、飛ぶシーンに関しては定評のある宮ア監督だけどこの作品の飛ぶシーンは群を抜いて素晴らしい。空中戦もさることながら、穏やかな空を静かにポルコの飛空挺が飛ぶシーン、沢山の飛空挺が音もなく空高く登っていくシーン、ジーナに挨拶に来るシーンがこれまた泣かせる。いよッ!男のロマン!カッコいいぞ、豚!ステキすぎるぞ中年男ッ!

あぁ、興奮気味しすぎた。この作品は何度観たか判らないが何回観ても泣ける。最初に観た時よりもどんどん、この作品の良さが年を取るごとに染み渡る。ポルコの生き様に惚れる。まぁそれだけミーも中年真っ盛りちゅ〜ワケですが。ふんッ、おこちゃまには判らないのよ!人生の侘びさびなのよ!ミスター・カーチスなんてまだまだヒヨッコだ。男は豚ッ。カッコいいったらカッコいいんだ!

また興奮した。ご老体なので血圧上げちゃいかんというのに興奮した。マダム・ジーナの声は加藤登紀子が担当してますが、すごくムーディでKORO的には満足でしたよ。この作品を観た時には加藤登紀子のことを知らなかったK元くんが後年、彼女の顔をTVで観た時に「こ、この人がマダム・ジーナ…。うわ〜ッ!夢が砕かれたッ」とかなりショックを受けたらしいが。ったく。失敬なヤツだな。彼女が歌う「時には昔の話を」はうっとりするほどステキな曲です。思わず涙。ピッコロ役の桂三枝も悪くないと思う。スッとぼけた雰囲気が出てたと思う。しかしなんといってもポルコの森山周一郎が渋い。酸いも辛いも噛み分けた男の渋みが存分に伝わってくるじゃありませんか。え、フランス語版はジャン・レノなの?…それはどうかと思うが。想像出来ん。え〜とDVD版にはフランス語の音声は収録されてたっけ?一度フランス語版で観てみよう。

ラストの余韻の残り方は加藤登紀子の歌との相乗効果もあって半端じゃない。粋な大人の物語。
1992年/日本/91分/監督:宮ア駿
紅の豚

「ここではあなたのお国より、もうちょっと人生が複雑なの」
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