カールじいさんの空飛ぶ家

愛する妻が死にました──だから私は旅に出ます。

冒険に憧れる内気な少年カールはある日、空き家で同じく冒険好きな少女エリーと出会い、やがて成人した2人は結婚する。初めて出会った空き家を新居とした2人は子供は授からなかったものの、ささやかながら幸せな生活を送る。2人は“伝説の滝”パラダイス・フォールについて語り合い、いつかそこに行こうと約束するのだが、日々生活に追われるうちにいつの間にか年を取り、約束を果たせないまま病に倒れたエリーが先立ってしまう。

一人になったカールはエリーとの思い出がつまった家を守る為に街の開発計画によって周囲に高層ビルが建造されていく中でも立ち退き要請を頑なに拒み続けていたが、ある事故が元で立ち退かざるをえなくなってしまう。彼は立ち退きの前夜、エリーの遺した冒険ブックを開き、ある決心をする。数万個もの風船を結びつけた家ごとパラダイスフォールに向けて旅に出ることを─


最初の10分間はいい。サイコーにいい。もうボロ泣きでしたわ。カールとエリーの出会い、つつましいながらも幸せに溢れた結婚生活、悲しい出来事、そして別れ。セリフを一切使わない映像のなんと美しいこと。ポストやネクタイ、小鳥の置物。そんな小道具を効果的に使って、後々の伏線になっていくトコが巧い。ほんの10分足らずの映像でお互いの相手に対する愛情が手に取るように感じられる。ここ数年で観た映画の中で断トツの感動映像デシタ。以上、終わり。

えぇ〜ッ。もう終わりッ。え〜と。最初の10分間で充分だと思うミーは間違ってますでしょうか。なんつ〜か、カールが冒険に出たあとがいまいちなんですわ。オープニングの10分間で最高潮に盛り上がったんで、あとはどんどん盛り下がるしかないみたいな。しんみりムードだけじゃお話的に膨らまないからムリヤリ、アクションパート入れちゃう?みたいな。

ミー的にはチャールズ・マンツはいらないような気がする。こういう風に話しに絡んでくるのかよと、やや感心はいたしましたが、どう考えてもヤツの行動原理が理解出来ん。あんなコトが出来るくらいなら、○○を○○えるなんてコトよりスゲェ偉業を達成しておると思うのですが。既にオカシクなってるってコトなのか。ミーはクリストファー・プラマーのお声を拝聴したかったんで、チャールズ・マンツのご活躍ぶりは嬉しいコトですが。あと関係ないけどラッセルくんが会社のシンジくんに似ててワロタ。見た目もだけど、あの空気の読めなさ加減が激似でウケた。

オープニングが素晴らしすぎて、冒険パートに入っても盛り上がるどころか、どうにも尻すぼみな印象が拭えなかったのは確かだけど、全体的には非常に高いレベルの作品でした。まず構図がいいよね。カールが椅子に座る何気ないシーンでもエリーを失った喪失感がひしひしと伝わってくる。小道具の使いかたも秀逸だし、なによりカールの表情がいい。すごく人間味溢れてる。そしてあれだけエリーとの思い出がつまった家に拘り、何がなんでも守ろうとしたカールがストーリー終盤で取った行動。カールの複雑な表情がまたイイ。並みの役者よりもよっぽど達者。この作品のテーマが伝わってきて泣けたわぁ。ま、オープニングほどではないけどな←しつこい

頑固で意固地なカールやおしゃべり過多で空気が読めない上に足手まといなラッセルにどんどん親しみが湧いてくる展開もよいですな。ピクサー作品では「Mr.インクレディブル」が一番のお気に入りなんですが、この作品もかなり上位の作品。

因みにミーは2Dで鑑賞しましたが、充分に楽しめマシタ。やっぱりご老体に3Dはキツい。
2009年/アメリカ/103分/監督:ピート・ドクター
UP
2010.09.12記

「バウリンガル」
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