名探偵コナン ベイカー街の亡霊

待ってろ…絶対、また逢えっから…

劇場版「名探偵コナン」シリーズ、第6作目。19世紀末のロンドンを舞台に敬愛するシャーロック・ホームズの世界へと迷い込んだコナンの活躍を描く。

アメリカ、マサチューセッツ。高層マンションの一室で一心にPCのキーボードを打っている少年。傍らのテレビからその少年のニュースが流れている。10歳にしてマサチューセッツ工科大学に入学した天才少年ヒロキ・サワダ。父親と幼くして別れ、母親とも死別したヒロキを養子として迎えたのはIT産業界の帝王と呼ばれるトマス・シンドラー。シンドラーの下でヒロキはDNA探査プログラムを開発し、今は人工頭脳“ノアズ・アーク”の開発に取り組んでいる。やがて意を決したようにヒロキはキーを押す。そして窓を開け、ビルの屋上に立つ彼。異変に気づき駆けつけてきた警備員が見たものは屋上の柵の前に揃えられたヒロキの靴だった。

それから2年後。コナンの父、工藤優作がシナリオを提供した新型ゲーム機“コクーン”の完成披露パーティがコナン達が住む米花シティホールで開催されることになる。繭の形をしたカプセルに乗り込んで楽しむこのゲーム機はゲーム業界を一変させる体感シュミレーションゲームになるという。さっそくコナンたち少年探偵団はコクーンを楽しもうと機械に乗り込む。ふと気づくと、彼らはどこか見知らぬ場所へと降り立っていた。どうやらここはコクーンが作り出した仮想世界らしい。数ある冒険の場から100年前のロンドンを選ぶコナン達。そこは深い霧に包まれ、今なお未解決の凶悪犯“切り裂きジャック”が闊歩する世界。しかしコクーンのシステムは人工知能ノアズ・アークに占拠されてしまう。ノアズ・アークの挑戦を受け、解答を見つけ出さなければ参加した50人の脳を破壊するというノアズ・アークの言葉に愕然とするコナン達。

一方、現実の会場では殺人事件が発生。コクーン開発責任者の樫村が何者かに刺殺される。大学時代の友人だった工藤優作は事件解明に乗り出す。ゲームの世界と現実の世界。ノアズ・アークが示唆するゲームに仕掛けた現実の事件の解決に至る真実とは何なのか?


いきなり10歳の少年の自殺シーンからはじまるのに驚く。エラく重たいプロローグだな。妙に今までのコナン映画と趣が違うじゃないか。いや、別に不満なワケじゃないですけど。野沢尚の脚本に文句を垂れたいワケじゃないですけど。デモ、野沢尚はあんまり原作コミックの設定を知らないんじゃないのか?という疑問がそこかしこにあったもんですから。普段はクールぶっているのに憧れのホームズのこととなると子供のようにハシャぐ新一(コナン)の性格が判ってないというか。あのホームズの自宅に仮想世界とはいえ訪れたんですよ?少年探偵団の誰よりもコナンが真っ先に大興奮すると思うのに、妙に冷静なコナンに違和感。アンタ、ホントにホームズを敬愛してるのかよ。蘭の天然ボケな台詞にも笑えなかったなぁ。性格描写に対する不満はともかく。

どちらかというと謎解きよりもパニック重視に走っている感のあった劇場版コナンですが、この作品はミステリ重視で頑張っておりマス。純粋な推理モノを期待して観るとやや物足りない気はするが、ストーリーは凝っていたと思う。仮想世界に入り込んだコナン達つ〜のは、いくらなんでも非現実的過ぎやしねぇかとか、小五郎の見せ場がちっともナイじゃねぇか!とかコナン達と共に行動する子供がクソガキ過ぎてムカツクとか、なにより平次がこれっぽっちも出てきやしねぇ!という不満はありますが、意外とミーはこの作品がキライじゃなかったりする。それは舞台が19世紀末のロンドンだからです!ロンドンタイムズを80円で買える世界に釘付けです!単純だな、おい。

切り裂きジャックとシャーロック・ホームズを強引にも結びつけた世界観にどっぷりハマりましたよ。謎解きがチャチだろうが現実世界の犯人の動機があまりにも曖昧で首を傾げたくなるような理由でも構わん。19世紀末のロンドンにミーも行ってみたいぞ!「ヴァイキング」もローマ帝国での格闘ゲーム「コロセウム」、カーレースゲームの「パリ・ダカールラリー」やトレジャーハンターの「ソロモンの秘宝」もイラン!100年前のロンドンを舞台とした推理ゲーム「オールドタイムロンドン」。これしかないッ。

いかん、興奮した。すんません。19世紀末のロンドンというだけで血圧とか血糖値とか色んなもんが上がる体質なもんですから。「我が名はノアズ・アーク。我が目的は日本という国のリセット」だとご大層なコトをおっしゃるワリには陰謀度合いが小規模すぎねぇか?という疑問もあっちの方向へ。新一のお父ちゃんと同じく「あの頃の世界がホントに好き」なんですよ。ミーも実はシャーロキアン。

仮想世界でのコナンの謎解きに疑問があったり(ジャック・ザ・リッパーの殺人動機)、野沢尚が描きたかったであろう親子の絆が上手く描かれていない演出や「人生にリセットボタンはない」というこの作品のメインテーマが仮想現実でメインキャラクターも含めた登場人物が擬似的にとはいえあっさりと死亡してしまうので、どうにも説得力が薄らいでしまっているのは惜しいところ。どちらかに偏重することなくほぼ平行して進行する現実世界の殺人事件と仮想世界での出来事、そして2つののストーリーを結ぶ伏線が見事だっただけに残念。

エンディングで流れるロンドンの実写背景が美しい。そしてお約束のエンディング・ロール後のワンシーン。ワラタ。
2002年/日本/107分/監督:こだま兼嗣
名探偵コナン ベイカー街の亡霊
2009.04.19記

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