太西洋のヨット旅行に出た一行7人を乗せた船が、航海中に猛烈な嵐に遭遇し、無人島に漂着。その島を探索すると彼らより先に、一艘の難破船が漂着していたことが判明する。しかし乗員の姿はどこにもなく、航海日誌には“MATANGO”と謎めいた横文字が記されていた。そして島に群生する奇妙な形状のキノコ。やがて食料は尽き、彼らは恐る恐るそのキノコを食すのだが。
マタンゴ!キノコですよ、アナタ!キノコなんですよッ。ミーはこの作品を観た時、「ついに我が心のベスト1を見つけた!」と叫んじゃいマシタよ。え、B級じゃないですよ?素晴らしい作品ですよ?人間の欲深さ、幸せ、生と死がテーマなのですよッ!ついでにゾンビ映画でもあるし、名セリフもてんこ盛りですよ?素晴らしすぎる。
冒頭の語り口からイイです。ある精神病院の一室。男がコーヒーを注ぎながら呟きます。「あの人は死んだ。デモ死んだのは1人だけなんです。本当なんです!じゃぁ何故帰ってこないかって言いたいんでしょう。だけど、僕の話を聞いたらアナタも僕を○チ○イだと言うんでしょうね…」
一転、楽しげなヨット旅行の面々。大学の助教授とその恋人、会社社長とその部下と社長の愛人だった歌手に新進推理作家、漁師の息子。彼らはヨット旅行を楽しんでいるワケですが夜になって天候が急転。猛烈な嵐に遭遇しちゃうワケですよ。そして無人島に漂着。そして、その島は…マタンゴ!とにかくマタンゴなんですよ!
キノコが人を襲っちゃうんですよ!デモ、怖いのはそんなマタンゴじゃないのです。極限状態に置かれた人間の方がもっとコワイ。食料を奪い合い、女性を奪い合い、理性に訴えかけながら、その実自分だけ助かろうとする彼ら。マタンゴはそんな理性をなくし、自分の欲望のみに従う人間の成れの果ての姿なのです。あぁ怖い。
もう彼らのエゴをむき出しにした極限状態の中でのセリフはどれも鬼気迫っていて秀逸。キノコを食べてしまった仲間に向って「あいつら半分キノコなんだぞ!」とか、「人間じゃなくて結構」とか。それと水野久美扮する麻美の「みんなアタシが欲しいのよッ」っていうセリフと「いつかキノコになるのよッ」つ〜のも怖かった。あれ、ミーが書くと何故かおバカ系映画に感じるのは何故?この作品はおバカ系ではありませんッ。たしかに1963年の作品なんで特撮はショボイけど、その見事な展開と驚きのラストは従来の特撮恐怖映画とは一線を画した異色作だと思います。
確かにショボイくて笑いそうになるマタンゴ人間ですが、「フォッフォッフォッ…」と笑う姿がなんとも言えず不気味デス。知り合いで観たコトがあるって人がほとんどいないし、評価が低い気がしてならない作品ですが、DVDも発売されているので観たことのない方は是非一度はご覧になっていただきたい作品です。
1963年/日本/89分/監督:本多猪四郎
マタンゴ