アガサ・クリスティの傑作ミステリ、「ナイルに死す」を「オリエント急行殺人事件」に続きオールスター・キャストで映画化。
才色兼備な上に莫大な遺産を相続したリネット・リッジウェイ(ロイス・チャイルズ)。彼女は親友ジャクリーン(ミア・ファロー)の恋人であるサイモン(サイモン・マッコーキンデール)との婚約を唐突に発表。人目を避けるようにエジプトへとハネムーンに旅立つ。しかし2人の突然の結婚は周囲に思わぬ波紋をもたらす。豪華客船カルナーク号でエジプトの旅を楽しむ2人の前に現れるジャクリーン。さらに財産管理任されていたリネットの叔父アンドリュー(ジョージ・ケネディ)や自作の小説でリネットをモデルにしてからかっている作家のサロメ(アンジェラ・ランズベリー)とその娘でリネットに劣等感を持つロザリー(オリヴィア・ハッセー)ら、リネットに対して複雑な感情を抱く人物が大勢乗り合わせていた。そして私立探偵ポワロ(ピーター・ユスティノフ)もまたエジプト旅行を楽しむためにカルナーク号に乗り合わせていた。ポワロはリネットからジャクリーンを遠ざけて欲しいと依頼されるがその申し出を丁重に断る。そしてその夜。第一の事件が起きる。さらに翌朝、客室内で頭を撃たれた死体が発見される。第一の容疑者は一晩中、行動を見張られており犯行は不可能。船上で起きた殺人事件の謎に挑むポワロが辿りついた真相とは?
オール・ロケが敢行された壮大なエジプトの風景にまずうっとり。数々の遺跡が単なる背景ではなくストーリーに組み込まれている点にさらにうっとり。そこで繰り広げられる人間模様に脂汗じっとり。ストーリーが進むにつれて一見バラバラのように見えた色んな謎が最後にひとつに纏まり、一気に解明されていくミステリの醍醐味。おこちゃま時代のKOROはアガサ・クリスティの作品を貪るように読んでおりました。この作品の原作である「ナイルに死す」は数ある作品の中でも特に気に入ってる作品。舞台がエジプトというのもあるかもしれないけど、豪華客船内という閉ざされた空間で起きる不可能犯罪にワクワクしたものですよ。そういったワケで映像化された当作品を観た時は初っ端から大興奮。豪華なだけで散漫な印象になりがちなオールスター・キャスト映画ですが、この作品は豪華かつクリスティならではの推理劇が存分に堪能出来る良作。
ミア・ファローにベティ・デイヴィス、マギー・スミス、アンジェラ・ランズベリーと芸達者かつクセのある女優陣の演技も素晴らしい。オリヴィア・ハッセーも容貌にコンプレックスを持つロザリーをなかなか好演してマシタ。しかし。やはりなんといってもミア・ファローだな。ストーカー女ジャッキーを熱演。あつあつ新婚夫婦を追ってどこでも現れる神出鬼没ぶりに呆れるを通り越してワラタ。リネットとサイモンがいちゃいちゃしはじめると同時に現れてエジプトの遺跡について平然と解説とかはじめちゃいますから。その信じられないような痛さに背筋が凍りますよ。ジャクリーンの神経質でそれでいて図太い性格、執拗に2人を追いかけるいやらしくもいじらしい姿を演じ切っておりマシタ。
「オリエント急行殺人事件」のアルバート・フィニーに代わってこの作品以降、ポワロ役を務めるピーター・ユスティノフには違和感。ポワロは普通の人から見ると滑稽ともいえるほど身だしなみに異常な神経を使う愛すべきおっさん。彼にはそういう雰囲気がない。それにポワロは小男だぞ。180センチ超えのやたらと腹の突き出たおっさんじゃないぞ。いや、腹はややせり出てるかもしれんが間違いなく小男。ピーター・ユスティノフ演じるポワロはその立派な体格のせいか、ポワロというよりもH・M卿かギデオン・フェル博士。それとピンとヒゲが固まってない点も納得しがたい。ということで肝心のポワロ役がKORO的にはかなり不満かも。
クフ王のピラミッド、アブシンベル神殿やカルナック神殿などの遺跡を巡りながら、繰り広げられる愛憎劇。ミステリ映画の中でもオススメの1本。
1978年イギリス/140分/監督:ジョン・ギラーミン
DEATH ON THE NILE