ロッキー

15ラウンドを闘いぬくことに、ロッキーは永遠の愛をかけた……

無名の役者だったシルヴェスター・スタローンが「モハメド・アリ対チャック・ウェプナー」戦にインスピレーションを得てわずか3日で書き上げた脚本を元に製作された正にアメリカン・ドリームな作品。

フィラデルフィアに暮らすロッキー・バルボア(シルヴェスター・スタローン)はしがない三流ボクサー。本業のボクシングでは稼げず、闇金融の取立てで日銭を稼ぐ毎日だった。素質はあるのに、これといった努力もせずに30歳になっても賭けボクシングのボクサーに甘んじるロッキーは所属するジムのトレーナーであるミッキー(バージェス・メレディス)にも愛想を尽かされてしまう。

貧乏で何の希望もない毎日。だが、そんなロッキーにも生きがいがあった。ペットショップで働くエイドリアン(タリア・シャイア)の存在。ロッキーの友達で精肉工場に勤めるポーリー(バート・ヤング)の妹でもあるエイドリアンにロッキーは恋心を抱き、なにかにつけペットショップを訪れるが内気で容姿に自信のない彼女はなかなかロッキーに心を開かなかった。だが、お互いに不器用ながらも徐々に距離を縮めていく2人。

そんなある日、世界チャンピオンであるアポロ・クリード(カール・ウェザース)が建国200年祭のイベントとして開催される世界ヘビー級タイトルマッチで全くの無名選手を対戦相手にすると発表する。無名選手にチャンスを与え、アメリカン・ドリームを体現させることで世間の注目を集め、自らの懐の深さをも知らしめようという魂胆だった。

ロッキーを“イタリアの種馬”というユニークなニックネームを持つというだけの理由で対戦相手に指名するアポロ。ロッキーは実力の差や自分がサウスポーであることから、その申し出を断るがアポロの強引なまでの誘いに押し切られ、ついには試合を承諾。ロッキーの壮絶なまでのトレーニングがはじまる。─もし最終ラウンドまでリングの上に立っていられたなら、自分がただのゴロツキではないことが証明できる─


今さらですが「ロッキー」の感想を書いてみる。ライフワークですから。備忘録ですから。500本以上、感想を書いてますが未だ半分も書けておりマセンから。…言い訳で文字数を稼ごうとするんじゃねぇよ。

気を取り直しまして。「ロッキーのテーマ」を聴くだけで泣ける。ベタだと言われようが関係ないッ。「エイドリア〜ンッ」のシーンは名シーン。何度観ても号泣。でもね、やっぱりラストにいたるまでの過程が素晴らしいから泣けるんだよね。

素質はあるのに自堕落な生活に甘んじるロッキー。ナニをやってもうまくいかない。貧乏でどん底の生活。そんな彼にも一縷の希望。それはエイドリアン。彼にとっては絶世の美女。傍目から見れば冴えないオールドミス(死語)かもしれないが、ロッキーにとっては女神。汚れを知らない天使。2人の距離が徐々に縮まっていくトコなんて、もうお互い不器用で見てられない。デモ、ホントにピュア。

2人が初めて唇を重ねるシーンでわたしゃ号泣しました。こんなに美しいキス・シーンは観たコトないッと真剣に思った。美男美女でない2人なのに、そのシーンの美しいコトといったら。「地上より永遠に」のバート・ランカスターとデボラ・カーが浜辺で情熱的に交わすキス・シーンよりも「華麗なる賭け」のスティーヴ・マックィーンとフェイ・ダナウェイの糸引きキスよりもイイッ!ロッキーのひたむきさとエイドリアンの愛されているという気持ちが伝わってきて、名シーンが多いこの作品の中でも屈指の名シーン。思い出しただけで泣ける。

ロッキーをはじめとした登場人物がみな魅力的。いつも伏目がちだったエイドリアンがロッキーに愛されることでホントに美しく見えてくるから不思議。タリア・シャイア、やっぱり巧いわ。ちょっとした仕種で恋をしている女性をさりげなく表現するのはさすが。ロッキーを見送る時の表情や動作に愛し、愛されることの悦びと不安が表れてて見事としかいいようがない。人間の弱さを顕わにするエイドリアンの兄貴のポーリーやトレーナーのミッキーも愛おしい。

自分のことを棚にあげてエイドリアンやロッキーを散々罵るダメ兄貴のポーリー。そんなポーリーが見せる弱気な表情にほだされて邪険に出来ないロッキー。手の平を返したようにマネージメントを申し出てきたミッキーに悪態を吐いた後にトボトボと帰って行く彼を追うロッキー。言葉は聴こえず、2人の姿だけが映る。言葉なんていらないんだよ。2人が肩を組み、握手を交わす。それだけで充分だよ。

どうしようもなくダメな男達が罵り合いながらも、決してお互いを見捨てることが出来ない。絆や情の大切さを言葉に頼らずに的確に表現してる数々のショットにKOROちゃん、ことごとく号泣。。この作品は号泣ポイントが多いので誰かと一緒になんて観られマセンわ。

ロッキーがそれまでの自堕落な生活を捨てて厳しいトレーニングに励むシーンも思わず一緒に生卵飲む勢いで見入る。フィラデルフィア美術館の階段を登りきったロッキーのガッツポーズに観ているこちらの心も激しく高揚。単純だろうがヨイッ!

ほぼ同じ時期に公開された「タクシー・ドライバー」と同じく、主人公は何の目的も見い出せず、貧乏生活を送る男なんだけど、決定的に両者は違う。「タクシー・ドライバー」が反体制的な若者を描いたアメリカン・ニューシネマ最後期の代表作なら、「ロッキー」は“アメリカン・ドリーム”を体現したアメリカン・ニューシネマとは対極の作品。実際、ロッキーを演じたシルヴェスター・スタローンは劇中のロッキーと同じように一夜にしてスターダムにのし上がり、その快挙に映画ファンは熱い拍手を送った。愛・友情・努力という言葉が陳腐ではなく、素晴らしい響きを持つ作品。
1976年/アメリカ/119分/監督:ジョン・G・アヴィルドセン
ROCKY
2010.01.11記

「バカと内気でいいコンビになるよ」
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