ローマの休日

永遠に続く、たった一日の恋

妖精オードリーのアメリカ映画デビュー作にしてアカデミー最優秀主演女優賞を獲得したあまりにも有名な恋物語。

ヨーロッパ各国を親善訪問中の某国の王女アン(オードリー・ヘプバーン)は、最後の滞在国であるイタリアのローマで過密なスケジュールによる疲労から自由のない生活への不満が爆発。ついにはヒステリーを起こしてしまう。侍医により鎮静剤を打たれたアン王女だったが、疲労の為にかえって目は冴えるばかり。そしてある計画を思いつく。城を抜け出して街に繰り出そう!

侍従の目を盗んで城を抜け出したまでは良かったが、鎮静剤のおかげで無防備にも広場のベンチで眠りこけてしまうアン王女。そこに通りかかったのが、アメリカ人新聞記者のジョー・ブラッドレー(グレゴリー・ペック)。見るに見かねたジョーは結局、彼女を自分のアパートに連れ帰ることに。

翌朝、彼女が王女だと気付いたジョーは特ダネ記事をモノにするチャンスとばかりにローマ見物の案内役を引き受けるのだが─


今さらミーが感想を書くまでもない有名すぎるほどに有名な映画。ついでにロマンスものは激しく不得手なのだが。映画感想はライフワークだ。頑張れKOROちゃん。この作品はオードリーが可憐で実に魅力的で何度も鑑賞している作品。たまにはB級作品が大の好物のミーもこういった普遍的なロマンスを嗜むコトもあるのだ。男女の出会いと別れという月並みなテーマを、ここまで素晴らしいお伽噺に仕上げた監督と脚本家の手腕に唸る。

シンプルなお話なのに観る度に感動してしまうのは、オードリー自身から発せられる初々しさが一番の要因なのではないかと。彼女にとって初めての主演映画。初めての経験に対するとまどい、不安、そして喜び。そんなオードリーの心情がアン王女の心情と演技を超えたところでオーバーラップしてすごく説得力がある。それと王女役って演技力だけじゃ演じられないよな。やっぱり持って生まれた気品が必要だと思う。オードリーは例え大口あけて笑ってても王女だ。ギターで人をぶん殴ってもお上品。そんじょそこらの女優じゃ、あの気品は醸し出せないだろうな。

観直してみると意外にコメディタッチなのに驚く。勝手に脳内でどこまでも甘い恋物語に変換されていた模様。ジェラートのシーンや真実の口のシーンが有名だけど、それ以外にも小ネタがてんこ盛り。アン王女がスクーターを暴走させるシークエンスなんてサイレント風な作りでオモロイ。ジョーとエディ・アルバート演じるカメラマンのアーヴィングのやりとりが、ことごとくコントでこれまたオモロイ。ダンスパーティのドタバタ、水中ダイブ、そして○○。

ローマの観光名所を巡りながらアン王女とジョーが惹かれ合っていく様子が自然。“映画のついでにローマ観光を”ではなく真正面から“ローマ最高”と謳ったオールロケの数々の観光名所にうっとり。いやでもローマに行きたくなりマスよ。そして魅力的なローマでこれまた魅力的なアン王女が溌剌と動き回る様子が微笑ましい。

オードリーの美しさにばかり目がいくが、引き立て役に徹したグレゴリー・ペックもいい。彼のイモっぽさが逆に生きていると思う。結末が判っていてもラスト30分は号泣。お互いに惹かれ合っているのに「○○してる」という言葉を発しないのも見事。決して許されることのない恋だから。一夜限りの夢なのだから。判ってはいるけれど切ない。ただ見つめ合う2人。今にも溢れそうになりながら、決して落ちることのない涙。沈黙ゆえに雄弁なラストにまたも涙。
1953年/アメリカ/118分/監督:ウィリアム・ワイラー
ROMAN HOLIDAY
2010.01.17記

「ローマ。なんといってもローマです。」
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