13F

13F。そこにあるのは闇─

ある高層ビルの13F。コンピュータ・ソフトの開発者ダグラス・ホール(クレイグ・ビアーコ)は仮想現実世界の研究・開発に取り組んでいた。目下の課題はヴァーチャル・リアリティの技術を駆使して1937年のロサンゼルスを再構築して、そこに住む人々と意識をリンクさせてシミュレートした世界に入り込むというもの。

ある朝、ホールが部屋で目覚めると血だらけのシャツがあり、ホールのボスであるハノン・フラー(アーミン・ミューラー=スタール)が殺されたことを知らされる。事件を捜査するマクベイン刑事(デニス・ヘイスバート)はホールを疑う。また、天涯孤独であったはずのフラーの娘だと名乗るジェーン(グレッチェン・モル)が現われ、ホールは彼女の美しさにたちまち惹かれてしまう。

死の間際のフラーが残した留守番電話のメッセージを聞いたホールはその言葉を手掛かりに、同僚ホイットニー(ヴィンセント・ドノフリオ)の協力で1937年の仮想世界へと飛び込むのだが─


まず一言。タイトルから勝手にオカルトものとかホラーものと思っておりマシタ。「13F…そこは呪われたフロア。アナタの影はアナタのものではないかもしれない…」みたいな。勝手に陳腐なキャッチコピー作ってんじゃねぇよ。全然怖そうじゃねぇよ。ミーの勝手な思い込みはともかく。

全然、“13F”ってタイトルに意味がナイじゃねぇかッ!ミーは律儀に最後まで「13F」ってコトに重大な意味があるはず!と構えてたのに。単にタイトルが浮かばなかったから、思わせぶりなタイトルでもつけとく?みたいなノリじゃなかろうかと。強ち間違いではないと思ふ。

ノープランなタイトルはどうでもヨイ。大切なのは内容ですよ。ま、ぶっちゃけ「マトリックス」以降に量産された亜流作品といってしまえば身も蓋もナイわけですが。製作年が同じ1999年なんで亜流作品と決め付けていいのか判断に苦しむが、テイストは似通っておりマス。違いは主人公がスーパーサイヤ人にはならないってことでしょうか←違

主人公ホールを演じるのはクレイグ・ビアーコ。正直、「ロング・キス・グッドナイト」での悪役ぐらいしか記憶にない。なので主人公ホールの顔が画面いっぱいに映った瞬間、「うわッ濃い!そして紛れもなく悪人面」という印象しか浮かばんかった。どうも主役に感情移入出来ん。いっそ、フラー爺さんを主役にしてくれた方がミー的には嬉しいかも。

かなり主役に拒否反応だったが、内容的にはそこそこ楽しめた。早い段階でオチは判るし、それほどアッと驚くような展開でもないが、仮想世界と現実世界の見せ方が巧い。仮想世界が1937年のロサンゼルスってのがいい。セピアがかった色調。少しボヤけた映像が危うさを感じさせる世界。現実世界と仮想世界を行き交ううちに曖昧になっていく境界線。突きつけられる事実。ある人物が叫ぶ言葉が胸に刺さる。「俺達をそっとしておいてくれ!」

概ね、満足な出来の作品ですが、ヒロインのキャラが弱いのがどうにも惜しい。主要人物のホール、フラー、ホールの同僚であるホイットニーはそれぞれに見せ場があるし、演技も良かった。ホールの悪人面も観てるうちに馴れてきたし、後半はその悪人面が生きてくるシーンあり。フラーは出番はさほどないながら、非常に滋味溢れる演技をしてたし、ホイットニー役のヴィンセント・ドノフリオに至っては正に怪演。しかし、肝心のヒロインがあまりに薄味。もっと謎めいた美女ってカンジが欲しい。ヒロインの扱いが軽いものになってしまってるので、ストーリーに奥行きがない。それと渋さを狙ったせいなのか、妙に抑制を効かせてるのも惜しい。おかげで変に大人しい作品に仕上がってしまっている。

キャストも作りもB級だし、地味な作品ではあるが、ストーリーはしっかりしてる。派手さを求めなければ充分に楽しめる作品。
1999年/アメリカ/100分/監督:ジョセフ・ラスナック
THE THIRTEENTH FLOOR
2009.12.29記

「世界の○○に違う意味で絶望した」
アイ★ラブシネマTOPに戻る