16ブロック

わずか16ブロック(区画)先に証人を護送する──。それは簡単な任務のはずだった…。

ニューヨーク市警のジャック・モーズリー刑事(ブルース・ウィリス)は、かつて捜査中の事故で足を負傷。今では敏腕刑事だった頃の面影はなく、スコッチで心と身体の傷を紛らわす酒浸りの冴えない日々を送る、くたびれたおっさん刑事。ある日、夜勤明けで署に戻った彼は上司から仮釈放中に犯罪を犯したエディ・バンカー(モス・デフ)を16ブロック先の裁判所に朝10時までに護送してほしいと頼まれる。俺が今したいのはスコッチを浴びることだ!そんなジャックの願いもよそに15分もあれば終わる仕事と説得されて渋々ながらも引き受けるジャック。しかし朝のラッシュで車は渋滞。やたらと話しかけてくるエディに苛立つジャック。酒だ、酒!酒持って来い!とうとう車を降り、酒屋へと向かうジャック。ところが車に残したエディに何者かが近づき、銃を向けている様子が視界に入る。間一髪でエディを助け出したジャックは、馴染みのバーにエディと共に身を潜めて応援を要請するが、そこに現れた同僚刑事フランク(デヴィッド・モース)は思いもよらぬ事実をジャックに突きつけるのだった。


ブルース・ウィリスがくたびれたおっさん刑事を演じております。事故のせいで足が思うように動かないのに加えて酒浸り、しかも夜勤明けで寝不足という設定なので、肝心の逃走劇に全くスピード感がナイ。あんれまぁ〜ッ。ついでにストーリーがありきたりだったよ。エディのしゃべりがKORO的に受け付けないよ。再び、あんれまぁ〜ッ。デモ、けっこうブルース・ウィリスが好きなので観た。ミーは彼のくたびれた感が好きなのだ。「ダイ・ハード」での有り得ない超人ぶりも好きだが、ショボくれたおっさんを演じてるのも大好きなのだ。ま、要はブルース・ウィリスだったら、なんでもイイってことか?「薔薇の素顔」も好きだしな。

鑑賞前にストーリーも大して捻りがあるワケではなく、アクションシーンもさして緊迫感があるワケでもないが、ラストのワンカットが素晴らしく泣けると知り合いに聞かされていたのだが。そのラストのワンカットに繋がるドラマ部分が淡白つ〜か、お互いの心の内が描写がほとんどなかったので正直、ミーはさっぱり泣けマセンでした。え、もしかしてミーの心が荒んでるだけ?ホントはあのラストのワンカットって号泣必至のシーンだったの?…そうかなぁ。多少は涙腺が緩んだが、スンバらしく泣けるほどには感動しなかったなぁ。ミーって人でなし?暗黒面の塊?ズンドコに泣きの感性が鈍ってるご老人?…どうしようもなく黄昏てきた。ミーの黄昏度合いはともかく。

確かにありがちなストーリーでした。デモ、ブルース・ウィリスのくたびれ具合がなんともヨロシイ。汗臭いアクションシーンは期待出来ないがアルコール臭満載の香ばしいアクションシーンはしっかり拝めますヨ。覇気を失ってしまったダメ刑事がかつての情熱を取り戻し、必死にエディを守ろうとするジャックをイケてないハゲのブルースが迫真の演技で演じておりマシタ。アンタ、いつから演技派になったんだよとイラン心配してしまうほどにハゲが熱演。イケてないハゲぶりを前面に出してるのに、何故か渋い。決して贔屓目ではなく、ジャックは渋い。酒は切れるし、寝不足だしで常に息切れ状態のジャック。かなりくたびれたおっさんなので素晴らしいアクションは期待出来ないが、忘れかけていた正義感が呼び覚まされて徐々に精悍な顔つきになっていく表情や機転を利かせて危機をすり抜けていく様子は小気味がヨイ。

それと脇役の星ともいえるデヴィッド・モースがいいね。彼もしっかりハゲてマシタ。デモ、渋いッ。相変わらずの名脇役ぶりに唸る。見事に悪徳警官。彼が登場すると妙に画面が引き締まるカンジ。デヴィッド・モースが悪役を演じていながらも眼差しにどこか悲しげというか良心の呵責が見え隠れしてて、そこがたまらなく良かった。ブルース・ウィリスとデヴィッド・モース、大好きなおっさん2人が対峙するシーンはKORO的には滋味溢れるシーンで非常に味わい深かった。

ざらついた声でゴニョゴニョしゃべるモス・デフのしゃべりが序盤はかなり癇に障ったが、中盤以降で単なるおしゃべりな小悪党じゃなくて、けっこうイイ奴じゃんと気づいてからは気にならなくなった。捨てられた子犬のような眼差しはけっこう可愛かった。それとバス停のなぞなぞでミーの性格も教えて欲しいぞ。バスジャックの件での彼の言動もイイね。誕生日についてのやりとりがホロリとさせてくれますよ。

DVDには別バージョンのエンディングが収められているってことでわざわざレンタルして観たけど、正直いらねぇ。劇場公開版で充分。感涙するまでには至らなかったが、暖かい気持ちになれたのは確か。失っていた人間味が戻ったかのようなジャックの笑顔に心が暖まる。
2006年/アメリカ/101分/監督:リチャード・ドナー
16 BLOCKS
2009.04.03記

「HAPPY BIRTHDAY,JACK」
アイ★ラブシネマTOPに戻る