戦慄の絆

鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督による心理サスペンス。

カナダ、トロント。不妊治療で有名な産婦人科医院を共同開業する一卵性双生児の医者、エリオットとビヴァリー(ジェレミー・アイアインズ2役)。スマートに立ち振る舞うエリオットを研究熱心なビヴァリーがサポートし、医師界の頂点に登りつめていく日々。そんなある日、女優のクレア(ジュヌヴィエーブ・ビジョルド)が診療に訪れる。ビヴァリーは奔放な彼女に惹かれていくが、それは全てを分け合い、幼少時より正に一心同体に育った兄弟の心の均衡を崩していくことでもあった。クレアを愛し求めるほどに分身であるエリオットへの忠誠を欠いていくビヴァリー。生き写しの人生を歩む双生児の行き着く先とは?


深紅に染まった背景に奇怪な手術道具や怪しげな人体解剖図が浮かぶオープニングから、クローネンバーグ監督の世界にどっぷりハマレます。ホラー色の強い作品群が多い監督ですが、この作品はホラーが苦手な方でも充分楽しめる作品です。まぁちょっと(かなりか?)アブナイ映画ですが。主人公の一卵性双生児を1人2役で演じているジェレミー・アイアンズがステキ。当時その余りに見事な合成ぶりが話題になりました。ホントに双子がいるようにしか見えません。

ストーリーは双子だけど、全く正反対の性格の2人の前に現れた女性の存在がそれまでの双子の心と身体の均衡を崩していき…ってカンジ。ありがちなストーリーだと思っちゃいけマセン。はっきり言ってその女性は脇役。そしておばさん。おばさんとか貧乳とかおいといて。そこからはじまるおぞましくも美しく哀しい兄弟愛の行き着く先が物語のメインテーマなのデス。あの時の双子の表情がなんともいえませんよ。あ、変なコト想像しないでクダサイ。決して○親○姦モノじゃないですよ?いや、そうなのか?

はじめの内は社交的な兄と内向的な弟ときっちり人格が分かれてて区別が出来るケド、次第にお互いのアイデンティティが崩れ始め、2人の人格がぐちゃぐちゃになり判別出来なっていく過程が見事。ラストシーンは涙が出てきて仕方がなかった。なんだか哀しすぎる。実は邦題がかっこよくてタイトル買いなカンジで鑑賞した作品ですケド。原題は「生き写し、瓜二つ」という意味だとか。

映像的にも非常に美しい作品でミーはホントに大好きな作品で何度観ても中盤辺りから涙なくして観れないんだけど、万人にオススメ出来る作品ではないと思う。全体的に暗いし、グロいし、ラストは救いようがないし、クローネンバーグだし。あとキレイなお姉ちゃんがこれっぽっちも出てこないし。クレア役のジュヌヴィエーブ・ビジョルドはいい女優だがオバサンだし、エリオットの愛人役の女は○ッチワ○フみたいな顔してるし。

ラストのワケ判らなさは正に戦慄。そして眼鏡をかけたビヴァリーはこの作品当時のクローネンバーグを彷彿とさせる。ある意味、内省的な映画なのかな。彼が描く性には悦びの欠片もなく、ただ破滅的で、そして悲しい。
1988年/カナダ/116分/監督:デヴィッド・クローネンバーグ
DEAD RINGERS

「クローネンバーグは自分の作品に惚れて撮影中に恍惚状態になったとか」
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