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サイバーパンクの旗手、ウィリアム・ギブソンの短編「記憶屋ジョニイ」をキアヌ・リーヴス主演で映画化。

電子化が極限にまで進んだ未来。西暦2021年。世界は電子機器が溢れ、そこから発生する電磁波による環境汚染で身体が震えだし、遂には死に至るという奇病、NASが蔓延していた。情報を脳の一部に埋め込まれたチップで運ぶ、記憶の運び屋ジョニー(キアヌ・リーヴス)。彼は運び屋から足を洗いたいと考えていた。脳から記憶チップを取り出す手術代を稼ぐ為に北京からアメリカのニューアーク・シティまで極秘情報を運ぶ依頼を引き受ける。ジョニーは北京に向かい、許容量を越えた情報を記憶するが…


テーマ的に映像化が難しいと言われたらしいウィリアム・ギブソンのサイバーパンク「記憶屋ジョニイ」の映画化。雰囲気は悪くないが全体的に見るとかなり惜しい作品。映像的にもキャスティング的にも不満が残る。

キアヌ・リーヴスは没個性な雰囲気がジョニーのイメージに合ってて好演してたと思う←誉めてるのか?しかし、全編に漂うイメージがどれも既視感いっぱいなのはこれいかに。「ブレードランナー」のビジュアル・デザインを担当したシド・ミードがこの作品でもビジュアル・デザインを手掛けているワケですが彼の仕事振りにケチをつけるワケじゃないが「ブレードランナー」の世界を観ている気が終始してて仕方がなかった。セット撮影がほとんどでSFXもあまり使われていなかったような気がする。しかもそのセットがそこはかとなくどころか間違いなくチープだったような。アクションシーンも今ひとつ緊迫感に乏しい。1995年の作品ですが当時観た時でさえ、古臭さを感じずにはいられない出来に唖然としたよ。

アイスTやドルフ・ラングレンがいつもとは違う雰囲気のキャラクターを演じていたのは拾いモノ。ドルフ・ラングレンなんて全然、彼とは気付きませんでした。彼の怪演ぶりはかなりの高ポイント。彼はただの肉体バカではなく意外と真面目でインテリらしい。北野武も参戦。相変わらず無口で不器用そうなキャラクターを演じてる彼ですが、ちょっぴりメロウな役柄がイイ味を出しているのにそれがうまく生かされてなかった。あの怖いんだか怖くないんだか判んなくて、それがかえって不気味なところとか。せっかくキアヌにドルフ・ラングレン、北野武という信じられないような(節操がないとも言える)共演が実現しているというのに2人が何とも勿体ない使われ方しかされてなかったのは誠に遺憾。

監督のロバート・ロンゴという人は短編は撮ったことはあるけれど長編はこの作品が初めてだとか。初の長編映画ながらテンポよくまとめてると思ったけど、それだけにデジャヴュなカンジのデザインとキャラクターを生かしきれていないのが惜し過ぎる。テーマのスケールの大きさに反して出来栄えはなんとも小粒な作品。
1995年/アメリカ/105分/監督:ロバート・ロンゴ
JOHNNY MNEMONIC

「“シャツをクリーニングに出したい…”という台詞は帝国ホテル好きのキアヌのアドリブ」
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