ジョニーは戦場へ行った

青春の輝き、生きることの強さ、尊さ、素晴らしさ…

監督であるダルトン・トランボが反戦的ということで発禁処分になった自身の小説を1938年の発表から30数年の時を経て、ようやく映画化した渾身の一作。

第一次世界大戦に出征したコロラド州の青年ジョー・ボナム(ティモシー・ボトムズ)は、ヨーロッパの戦場で砲弾の直撃を受け野戦病院へと運ばれる。姓名不詳重傷兵第407号として病院のベッドに横たわるジョー。身体のほとんどの器官を失い、延髄と性器だけが残された彼だったが心臓は動いていた。ジョーは生きていたのだ。しかし軍医長ティレリー(エドワード・フランツ)は彼をほとんどの器官を失いながらも生きている研究対象という目でしか見ていなかった。だがジョーは感じている。考えている。ジョーの意識は出征前夜のことを駆け巡る。恋人カーリーン(キャシー・フィールズ)と過ごした時間。そして出征の朝。愛国歌が流れる中、ごったがえす駅で涙を流すカーリーンを抱きしめたこと。ある日、軍医長の命令でジョーは人目につかない場所に移されることになり、倉庫に運び込まれる。ジョーは腕の付け根が痒くなった。だが驚くことに腕はない。それどころか両足もないらしい。いや、両腕、両足だけではなく、眼も口も鼻さえもなかった。人間じゃない!そしてこんな姿の僕を生き長らえさせる医者達も人間じゃない!死にたい!殺してくれ、殺してくれ…


この映画を初めて観た時、ミーはとても幼かった。従姉に「ちゃんと観ておきなさい」と言われ、観た。子供心にその内容のあまりの辛さに震えた。というか子供時分に観てはイケマセン。トラウマものです。当時のご幼少KOROは反戦という言葉さえ知らなかったワケですが、この作品を観た直後はホントに怖くてツラくて堪らなかった。「生きるってなんなんだよ〜ッ」と号泣したとかしないとか。というか従姉も少しは考えて作品をセレクトして欲しかった。年端のいかぬ子供に反戦映画など鑑賞させるのは如何かと思う。今では感謝してますが。

ジョーは野戦病院のベッドに横たわっている。全身包帯だらけ。第一次大戦に出征し、体の大部分の器官を失う大怪我を負ってしまったジョー。両手両足、目も口も鼻も爆撃によって吹き飛ばされてしまった。彼は目も見えず、耳も聞こえず、話す事も出来ない。そんな自分の状況を把握できないままでいるジョー。

身元不明兵として病院に運び込まれるジョーは医者達から見れば単なる研究対象でしかないのです。ほとんどの器官を失っているにも関わらず生きている意識さえない肉の塊だと。でもジョーは光や温度を感じる事が出来る。ちゃんと意識がある。今の自分の状況が飲み込めないまま、過去に思いを馳せるジョー。出征前夜の恋人と交わした愛、父親の事…。

ジョーのモノローグで語られる現在はモノクロで描かれ、輝き、喜びに満ち溢れた過去は鮮やかなカラー画面で描かれています。その対比が幼心に鋭く突き刺さって、つらかった。やがて意識のあるただの肉の塊になってしまった自分に気付いた時の彼の絶望。

死にたい、死にたい…。けれど自らの命を絶つことも今の自分には出来ない。息を止めて死のうにも彼は呼吸をしていない。肺にポンプで空気を送り込んでいるのです。悲しくて、情けなくて、でも涙さえ流せないジョー。生きてもいないし、死んでもいない自分…。

ジョーを研究対象としてしか扱わない医師たちの中でただ1人、彼についた看護婦だけはジョーに優しく接します。ジョーの胸に指で文字を書き、意思を伝える彼女。クリスマスの日、メリークリスマスとジョーの胸に文字を綴る彼女に、なんとか自分には意識があることを伝えたいジョーは…。

ラストで彼が繰り返すメッセージに涙が止まりませんでした。戦争映画もいくつか観ましたが、この作品ほど心に残る映画はないです。思い出す度に辛くなるけれど。
1971年/アメリカ/112分/監督:ダルトン・トランボ
JOHNNY GOT HIS GUN

「人々に僕を見せてくれ、出来ないなら殺してくれ」
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