千と千尋の神隠し

トンネルのむこうは、不思議の町でした。

10歳の少女、千尋は引っ込み思案で臆病なとこはあるが、どこにでもいるごく普通の女の子。ある夏の日。引越しが決まり、転校することになった千尋は朝から不機嫌。父親の運転する車で引っ越し先に向かうが彼女の気持ちは手にした花と同様に萎れていた。新居へと向かう途中で森の中に迷い込んだ千尋一家。目の前には奇妙なトンネル。嫌な予感がした千尋は両親に「車に戻ろう」と縋るが、好奇心旺盛の両親は千尋の言葉に耳をかさずにトンネルを進んでいく。そこが人間が入ってはいけない世界とも知らずに…


物語は、父親の運転する車で引越し先の新しい家へ向かう場面で始まります。千尋にとっては、新しい学校も新しい友達も新しい家も全てが煩わしく、浮かない顔をしています。後部座席で寝転がり、友達にもらった花束を抱えてぼんやりとしている千尋。前半部分の千尋ははっきり言ってちっとも可愛くない。下ぶくれで愛想のない子だなぁというのが正直な印象。やがて車は新しい家の近くまでやってくるのですが、パパが道を途中で間違えたのか、なにやら怪しげなトンネルの前に出てきてしまいます。

もの珍しさにつられて、ずんずん足を踏み入れていくパパとママ。好奇心旺盛だな、おい。それに比べてチキン体質の千尋は異常に怯えて必死に両親を制止します。彼女は好奇心ナッシングのご様子。そして「不思議の町」に足を踏み入れ、知らないとはいえ、掟を破ってしまった両親は…。パパとママの変身ぶりが超リアルでうげぇ!と叫びそうになったKORO。アンタら、飛ばねぇ○○だな。

臆病者千尋はそれだけで大ショックですが、もっとショッキングな出来事が彼女を襲います。そこへ現れる謎の美少年ハク。あぁ、彼のお姿を観られただけでミーはほぼ満足。ステキだわハク。さてそれからは怒涛の展開。働くもの食うべからず。千尋は不思議の町で成り行きから働くことに。町を支配する湯婆婆(ユバーバ)に「千尋だって?小生意気な!あんたは今日から“千”て名だよ!」などと脅され、名前まで奪われつつも健気に働く千尋改め千。このあたりから急に千尋=千が可愛く見えてくるから不思議。

今までの宮ア作品の主人公ってたいてい天真爛漫だったり、何か優れた能力持ってたりしてたケド、千尋は何の取り柄もない普通の女の子。どうも今まで甘やかされて育ってきた模様。ついでに引っ込み思案。その千尋がいきなり1人ぼっちで変な町で生きていかなければならない…。最初は戸惑いつつも彼女の心の奥に秘められた「生きる力」が呼び覚まされ、どんどん自分自身の考えで行動していくようになる千尋。いきなりヒロイン化していく千尋。カオナシに盲目的に惚れられるし。

展開の早さに少々、戸惑う。かなりシナリオを削ったのかな?と余計な憶測をしてみたり。クライマックス部分もこれは伏線なのか?と期待していたら何事もなく無事に物語が進んだり。

相変わらず登場するキャラクターが素晴らしく魅力的です。湯屋の支配者、湯婆婆の金が全ての強欲経営者の顔と愛息・坊に対する甘やかし放題のデレデレの顔。お見事としか言いようのない母親失格ぶりです。お声は夏木マリ様が担当。しわがれ声に「う〜んセクシー」と身悶えるミーは怖くてキレイなおばさま好きでしょうか?でも湯婆婆っていくつ?坊の父親ってどんな人?という疑問がよぎったり、よぎらなかったり。

カオナシは金をバラマクことでしか他人と関わることが出来ず、しかもすぐキレる性格。でも千尋にはフォーリン・ラヴ。彼の偏った愛の捧げ方に間違ってるよと思いつつも判ってあげたい気持ちになります。そして湯屋で働くナメクジ女もカエル男もみんな金の亡者。釜爺の千手観音のような手?足?とにかく彼の造形にしばし呆然。お声は菅原文太様でございます。そしてハク!キレイだわ!美しすぎるわ!優しいかと思えば時には冷酷。そんなハクに惚れてしまったKORO。おかっぱ頭がステキ。

ハク萌えのミーとしては千尋とハクがいい雰囲気になるのは歯がゆいのですが、初めは「人の為」に何かをする、何かしてあげたいという気持ちが希薄だった千尋がどんどん強くなり、自分の力で道を切り拓き、生きていく実感を感じ取っていく様子を観てると思わず「頑張れ!」と応援したり。

魅力的なキャラと妙に懐かしい町並みの不思議な世界。後半は駆け足過ぎるし、盛り上がりにはやや欠けてはいるが宮アワールドにどっぷり浸った2時間余でした。空と海の青が眩しいエンディング、心の中で涙いたしました。
2001年/日本/125分/監督:宮ア駿
千と千尋の神隠し

「カオナシの○○たい、○○たい、○○べたいって台詞が怖かった」
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