第二次世界大戦前夜のシベリア鉄道を舞台に車内で起きた密室殺人事件を描くミステリー。映画評論家・水野晴郎が自ら原作・製作・監督・脚本・主演した念願の監督デビュー作品。
1938年。モスクワから満州へ向けて走るシベリア鉄道の特別車両に山下奉文陸軍大将(水野晴郎)、佐伯大尉(西田和晃)、青山一等書記官(菊池孝典)ら3人の日本人をはじめ、契丹人女性の李蘭(かたせ梨乃)、オランダ人女優のグレタ・ペーターセン(シェリー・スェニー)、ウイグル人女性のカノンバートル(アガタ・モレシャン)、ポーランド人のゴールドストーン(フィリップ・シルバースティン)、ソ連軍大佐のポロノスキー(フランク・オコーナー)、そしてドイツ軍中佐のユンゲルス(エリック・スコット・ピリウス)の9人の乗客が乗り合わせる。列車が満州に向け発車して間もなく、ポロノスキーが毒殺されるという事件が起きる。そして李蘭とグレタも姿を消す。犯人探しに乗り出す佐伯と青山だったが、謎は深まるばかり。しかし心配無用。山下陸軍大将がいるじゃありませんか!
ミーはローカルディスクにサイト用の参考として映画感想ファイルを作ってるのですが、この作品の感想を「クソ映画とかカルトとか超越。凄まじい。永久凍土なみに寒い出来。カス」と書いてた。自分で書いときながら、身も蓋もない書き方だなと思った。そして10点満点で点数もつけてるが数百ある感想でただ1作、「1点」獲得作品。ホントはマイナス点をつけたい。しかし自分基準で1〜10点と決めてるので断腸の思いで1点。観たことを激しく後悔した。そして今まで感想を書くことも躊躇った。おバカ映画は好きですが、これはおバカでも全く可愛げのない作品。笑うに笑えないシーンのオンパレード。いやぁ〜映画ってホントに素晴らしいですねぇという言葉が赤面して裸足で駆け出し入水自殺を図りかねん勢いでカスです。まるでミーが毒舌のようですが気のせいです。事実なんですからッ。
まず偉大なる山下陸軍大将の初セリフ。「ボルシチも結構うまかった。おかげで体も温まったぞ」にいきなりノックアウト。棒読みすぎる。そしてアホすぎる。脚本も水野氏自身らしいが、映画評論家として多くの作品を観てきた経験は全く生かせてないようです。開始10分未満でサヨナラゲームになりそうな勢いです。そしてポロノスキーが毒薬で死んだら、「ポロノスキーは殺されとるぞ!」と超断言。アンタ、いつポロノスキーと会ったんだ?しかも現場も見てないだろ。やっぱり棒読み。もう水野氏の完全試合です。往年の金田正一(古ッ)を凌ぐ奪三振王ぶりです。
というか出てる俳優がことごとく知らないよ。かたせ梨乃しか知らんし。大体こういう密室殺人ものとかオールスター・キャストじゃなきゃ華がないだろ。全然知らない外国人俳優出されてもなぁ。そしてオマージュといえば聞こえはいいが、はっきり言ってパクリなだけの数々のシーン。もちろんシベリア鉄道内で起きる密室殺人は「オリエント急行殺人事件」。列車内の内装はあっちの10分の1以下のショボさですけどね。そして偉大な山下陸軍大将が泊まる客室は「オリエント急行殺人事件」でポワロが泊まる客室と同じ部屋番号。ポワロが「アナタのことはモナミとは思えません!」と憤慨すること必至です。他にもヒッチコックの作品からの引用がそこかしこに。そして謎すぎる編集。一箇所、どう考えても繋がってないだろと思えるシーンあり。フツー、ちゃんと編集してたらイヤでも気づくぞ?DVDが悪いのかと真剣に悩んだ。そしてこの作品を所有してる自分を真剣に不憫に思った。
サスペンスのサの字さえ見つからない展開、棒読みのセリフ、華のないキャスト、ショボいセット、走行中なのに絶対に揺れない車体、くどくてしつこいドンデン返し。どこまでも寒い内容は正にシベリア。もう観た人にツッコんで欲しくて仕方がないとしか思えない出来。それを大真面目にしかも大満足気に作るから可愛げがないっていうのよ!しかもエンディングが別バージョンのDVDが何本もあるし続編も作られてるし!水野氏が大好きな軍服を着て憧れの名探偵を演じて、大好きな映画を自ら作ってる!しかも主演で!という、どうしようもないくらいの暑苦しい喜びと映画に対する愛情は感じられるかも。ただ方向性とか表現法はかなりとんでも次元ですが。騙されてはいけません。カルト作品ではないです。カスです。
1996年/日本/90分/監督:MIKE MIZNO
SIBERIAN EXPRESS
2008.02.01記