スカイ・クロラ The Sky Crawlers

もう一度、生まれてきたいと思う?

森博嗣原作の同名人気シリーズを映画化。監督は押井守。

人々がショーとして行われる戦争を安全な場所から眺めることでしか平和を実感出来ない、どこかの世界。カンナミ・ユーイチは戦争請負会社ロストック社に所属する戦闘機のパイロット。前線基地に配属されてきた彼に判っているのは自分が“キルドレ”であるということと戦闘機の操縦の仕方だけ。キルドレとは16〜17歳で成長をやめてしまう子どもたちのこと。どうしてキルドレが存在するのか。キルドレが背負う運命とは。自身がキルドレであるユーイチにもそれは判らなかった。そしてパイロットとして戦うのはみなキルドレ。その理由もユーイチは知らない。いや、考えたこともなかった。空で戦うこと。それがユーイチの全てだった。彼が赴任した基地の女性司令官クサナギ・スイトも、かつてはエースパイロットとして空で戦ったキルドレのひとり。彼女に対面したユーイチは前任者のことを尋ねるが答えは返ってこなかった。ただ初めて会ったはずなのに、まるでユーイチを待ち続けていたかのような視線を注ぐスイト。ユーイチの前任者であるジンロウはスイトに殺されたと噂されていた。そしてスイトはキルドレでありながら子どもを産んだとも…。やがてスイトに惹かれていくユーイチ。時間も言葉も必要なかった。

一方、戦況は日ごとに激しさを増していく。ティーチャーと呼ばれるラウテルン社のパイロットがロストック社のパイロット達を次々に撃ち落していったのだ。絶対倒せないといわれるティーチャー。ただ1人、大人のパイロットだというティーチャー。やがて大掛かりな作戦が遂行され、ユーイチ達は前線へと向かうが…


声優のことはとやかく言いませんよ。加瀬亮の淡々とした台詞まわしもユーイチのキャラクタに合ってると考えれば、それほど苦言は申しませんよ。凛子たんは微妙でしたけど、どうにか許容範囲でしたよ。「可哀想じゃないッ」と叫ぶシーンは凛子たんが気の毒に思えましたケド。他の方は概ね、ヨカッタと思う。ただキルドレ役にしちゃ〜年食い過ぎてねぇか?疑惑満載ですけどね。容姿もユーイチとスイト以外は思春期の子に見えない。土岐野なんて絶対、キルドレに見えマセンから。アンタ、キルドレじゃなくて銀英のポプランだろ。ポプランがスパルタニアンじゃなくて震電に乗ってるみたいな。

しかし、なんだ。非常に感想が書きづらい作品だよ。台詞は聴き取り易かったが内容はすんなり入ってこないよ。森博嗣氏の原作を読んでないし、予備知識ゼロで観に行きましたから。押井さんの新作か、観とくか。みたいな。ムチャクチャ押井マニアとかじゃないですけど、なんかやっぱり気になりマスから。で、観たワケだが相変わらず世界観は語るがキャラクタのことは語ってくれないので、はじめはどういう状況なのか見えてこなかった。戦闘シーンはキレイだったね。デモ、非常に作りこまれてはいたけど高揚感はなかった。それはこの戦争がショーだと判っているせいなのか。キルドレたちが「明日死ぬかもしれない」のに全く、悲壮感を漂わせていないせいなのか。決して判りにくいストーリーではないんだけど入り込めないんだよね。空や戦闘機、部屋、タバコの描写は凄いが人物の描写の線が明らかに違ってて違和感。キルドレという人種?を表わすとああいう線になっちゃうのかなぁ?とは思うけど、なんか馴染めない。

キルドレは○○○○。だから彼らには○○がない。それは過去も未来も現在もないということ。色々なことで心を濁らせないために。心を空に置いてきたのはそのせい。空を飛んで心を透き通らせる。地上にいる時の自分は曖昧な存在だけど、空を飛んでいる時は違う。空のように透き通った心でいられる。だから僕達は飛ぶ。…そういうことを描きたかったと思うんだけど、なんとも描き方がマズい。ユーイチとスイトの恋模様も感情移入出来ない。彼女がキルドレとして生きていく上での苦悩が上手く伝わってこない。ドラマ性が希薄っていうか。あら、もしかして主人公2人の棒読み台詞のせいで貧弱なストーリーにしか感じないんでしょうか?否。棒読みもマズいが、キルドレの存在やユーイチの前任者であるジンロウのことを説明口調の台詞で語っちゃうのもイカン。えぇ〜ッみたいな。今のはもしかして種明かしですかッ!みたいな。呆然。納得出来ん。スイトが声を上げて泣くシーンもそれまでのドラマが貧弱だから心に響いてこない。ついでに泣いてる表情が妙におばあちゃんぽくて引いた。ラストでユーイチが呟く言葉も肝心の「いつもの風景」が描かれていないから説得力がない。ないない尽くしですよ(哀)
2008年/日本/121分/監督:押井守
THE SKY CRAWLERS
2008.08.13記

「エンド・ロール後のシーンはスイトのM体質を表わしているのか?」
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