太陽がいっぱい

ギラギラと輝く太陽の下、青春の野望をのせてドロンの眼がきらめく。鮮烈なサスペンスと甘美なメロディに彩られた永遠の名作があなたの胸に帰って来る!

貧しい青年トム・リプリー(アラン・ドロン)は富豪の友人フィリップ・グリーンリーフ(モーリス・ロネ)の父にフィリップを実家へ連れ戻すよう依頼される。しかし、傲慢なフィリップの仕打ちにトムは耐えかね、彼を殺害。そして彼に成り済まして財産を奪おうとする。身分証を偽造し、フィリップの筆跡の練習を重ね、トムの緻密な計画は完璧に見えたが…

孤独で冷徹な青年にアラン・ドロンが扮した、パトリシア・ハイスミス原作のサスペンス・ミステリ。


真っ青な海、ギラギラと照りつける太陽。その下で暗く光るトムの瞳。青春の翳り。社会の底辺で必死に生きてきた青年の哀しい青春を描いています。世代的にミーはアラン・ドロンの全盛期を知らないので(ホントよ!)、この作品が大ヒットして特に日本での人気が絶大だったというのも実感が伴わないケド、確かに彼の陰のある美貌が冴えて適役です。フィリップの恋人マルジュ(マリー・ラフォレ)の輝くような美しさに眩しげに視線を送るトム。ダークさ満開でヨロシイ。アラン・ドロンって美しいんだけど、いかがわしい青年って役を演じるとホントにいいカンジ。「ショック療法」で変なマッドサイエンティスト役を演じた時はファンでなくても、どうしちゃったんだよと彼が心配になりマシタけど。ま、KORO的にはドクター・デビレを演じてたアラン・ドロンの方がお好みデス。キ○○○医者とかドロンの全裸シーンとかはおいといて。

フィリップの腰巾着だった時はニセモノくさい爽やかさを纏っていたトムが殺人を犯し、成り上がることを決意した時からぎらつくような視線と凄絶なまでの美貌ぶりを放つ変身ぶりが素晴らしい。全編を彩るニーノ・ロータの甘い旋律が逆にサスペンスの中にも虚しさを漂わせていて、これまた素晴らしい。演出も見事。トムの心理状態を的確に表わした数々のショット。特にフィリップを船上で殺害した時のシークエンスなどは観ているこちら側がトムと一体化したような感覚に襲われるほどに緊迫感溢れる描写。荒れ狂う海。激しく揺れるヨット。隠そうとしても何度も晒されてしまうフィリップの死に顔…。

終盤まで緊張感が途切れることなく、終始ハラハラしっぱなしの展開に釘付け。演出、脚本、音楽、キャスト。どれをとっても見事の一言。アラン・ドロンの美しいが卑しさが見え隠れする表情、立ち居振る舞い。フィリップの生まれながらにして恵まれ、全てを持ったもの特有の傲慢さ。マルジュの清楚で曇り一つもない美しさ。唯一の難点はフィリップが放蕩息子にしちゃ老け過ぎじゃねぇか?ってトコでしょうか。当時33歳にして既に名優の雰囲気を醸し出してるモーリス・ロネがどう頑張っても20代に見えないのはツライところ。老け過ぎというのを差し引いても充分、好演してたので些少な問題ではありますが、マルジュと恋人同士というよりは金持ちオヤジとその愛人ていう風にしか見えなかったというのが正直なトコロ。

1960年公開の作品ではありますが今、観ても充分鑑賞に耐えうる作品。完全犯罪のテクニックとスリル、綻びはじめる計画、驚きのラスト・シーン…。あぁ、太陽がいっぱい。
1960年/フランス・イタリア/122分/監督:ルネ・クレマン
PLEIN SOLEIL

「実は○○映画らしい」
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