断崖

夫に対する疑惑の念に取り憑かれ、徐々に平静さを失っていく妻を描いたヒッチコックの心理スリラー。

やや婚期を逸した感のあるリナ(ジョーン・フォンテイン)はジョニー(ケーリー・グラント)という男性と出会い、激しい恋に落ちる。やがて2人は結婚。幸せな日々がリナを待っていたはずだったが、ジョニーの杜撰な財産管理の仕方や、競馬狂い、懸命に毒薬について調べる姿を見て、彼女の疑念は日々増していく。ある日意を決し、家を出ようとしたリナを乗せたまま、ジョニーの運転する車は断崖を目指して突き進む…


ヒロインのジョーン・フォンテインがまことに美しい!初めは野暮ったく冴えない女性なのにジョニーと知り合い、それまで掛けていたメガネを外すシーン。恋する女はキレイさ!けしてお世辞じゃないぜ!ってカンジでございます。←古い。恋を知って情熱的な女性となり、夫に疑惑を抱き始めてからは神経質な表情を湛え出し、やがて強い妻の姿になりとアカデミー主演女優賞受賞も納得の素晴らしい演技です。ケーリー・グラントも悪人なのか善人なのか最後まで判らないという難しい役どころを上手く演じています。

とても有名なジョニーがリナにミルクを運んでくるシーン。リナはそれに毒が入っているのでは?と疑っています。ヒッチコックはミルクの入ったグラスに電球を入れて、白く光らせることにより、その存在を際立たせてリナの緊迫した心理状態を表現しています。なんだか真っ白いミルクがとても怖ろしいモノに見えてくる。

この作品は実は違うエンディングも用意されていたそうですが、製作者側の強い反対でボツになったとか。そのせいでヒッチコック自身はエンディングに大いに不満らしいです。KOROも伝え聞いたボツになったエンディングもアリなんじゃないのかと思ったり。とはいえ、クライマックスシーンはスピーディかつ巧みなカメラアングルと不穏な音楽があいまってスリル満点。やはり名場面であることは間違いない。
1941年/アメリカ/99分/監督:アルフレッド・ヒッチコック
SUSPICION

「J・フォンテインは姉のO・デ・ハヴィランドと凄まじく仲が悪く、役の取り合いに敗れ自殺を考えた事もあるとか」
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