第二次大戦後のウィーン。アメリカの西部劇作家ホリー・マーチン(ジョゼフ・コットン)は旧友のハリー・ライムの招きでこの街を訪れた。しかし到着早々、自動車事故でハリーが死亡したことを知らされる。ハリーの死には3人の男が立ち会っていたというのだが、そのうちの2人に聞いても3番目の男などいないと言う。“第三の男”の正体を追って、独自の調査を開始するマーチン。だが、そんな彼を何者かが脅かしはじめ…
素晴らしい。謎解き部分は今観ると、あっさり気味というか事件の真相もさほど驚きはないですが、もう雰囲気がたまらなくイイ。ハリーの葬式で出会ったアンナ(アリダ・ヴァリ)という女優に一目ぼれするマーチン。悪いヤツと知りながら、今もハリーを愛し続けるアンナ。そんな2人が最初から最後まで噛み合ってないのがおかしくも哀しい。そしてあのオーソン・ウェルズのいたずらっぽい笑顔!出番は少ないけど、強烈な印象を残す彼に惚れマシタ。ジョセフ・コットン演じるマーチンは情けないというか。帰ればいいのに事件に首をつっこむし。惚れなきゃいいのにアンナに惚れて噛み合わない会話を続けるし。そして引き受けなきゃいいのに講演依頼を受けて赤っ恥かくし。はぁ情けない。
ストーリーはもうホントに単純。1940年代という時代のせいかもしれないケド、ヒネリはないです。はじまってすぐ○○○が○○でるワケないし!と思ったし。アメリカで「サンタフェ無宿」とか「オクラホマ・キッド」とか書いてる自他共に認める三文作家ホリー・マーチン。窮状を見かねてウィーンに来いと言ってくれた旧友ハリー・ライムの言葉に一、ニもなくウィーンに来たらハリーはお亡くなりになってました。あらまぁ。ちなみにマーチンのファンだという若い警官役は007映画の初代M役のバーナード・リーだった。
ハリーの葬式でキャロウェー少佐(トレヴァー・ハワード)からハリーが闇屋だったと聞かされるが信じられないマーチンはハリーの恋人だったアンナに惚れちゃったから、さぁ大変。飛行機代出してやるからアメリカに帰れという少佐のご意見無視。ハリーの死の真相を探ると高らかに宣言。明らかにアンナに近づきたいだけでしょうがッ!そして始まるマーチンのへっぽこ捜査。イイ男を気取ってアンナに言い寄ってもことどとく空振り。特にマーチンが素晴らしい推理を披露するわけでもなく、真相が明らかになるんでサスペンス的醍醐味は確かにないといえばない。デモ、イイッ。
有名なテーマソングは意外と作品の雰囲気に合ってないような気がしたのはKOROの錯覚?まぁヨイ。とにかく光と影、モノクロ映画の良さを最大限に生かした作品だと思います。ハリー登場のシーンは何度観てもカッコイイ。光と影を巧みに織り交ぜた映像に酔いしれました。夜の街並み、マーチンを取り囲む野次馬にかかる影。下水道さえも美しい。ストーリー後半、下水道の中のシーン。警官に追われ、暗黒の中、浮かび上がる○○○の焦りの表情。響きわたる靴音、水しぶき、どこまでも続くトンネル。そして深い闇。その後のカメラが地面すれすれのローアングルで格子蓋を押し上げようとする指と背後の街並みを捉えたシーンも素晴らしいですなぁ。
ラストの枯葉舞う中、一瞥だにせず去る女。全てを悟る男。煙草の煙が目に染みるぜ。
1949年/イギリス/105分/監督:キャロル・リード
THE THIRD MAN