東京ゴッドファーザーズ

私の「名づけ親(ゴッドファーザー)」は3人のホームレスでした――。

クリスマスの夜、一人の捨て子をめぐって東京に《奇跡》が起こる。

自称・元競輪選手のギンちゃんと元ドラァグ・クイーンのハナちゃん、家出少女のミユキ。3人は新宿の公園でホームレス生活を送っていた。クリスマスの夜、ハナちゃんの提案でゴミ捨て場にクリスマス・プレゼントを探しに出かけた3人はそこで赤ちゃんを拾ってしまう。思わぬクリスマス・プレゼントに戸惑うギンちゃんとミユキだったが、ハナちゃんは大喜びで赤ちゃんに“清子”と名づけ、自分で育てると言って聞かない。そんなハナちゃんをどうにか説得して自分達の手で清子の実の親探しをすることになるが、行く先々で次々と事件に巻き込まれてしまう。


前から観たい、観たいと思いながら何故か観ていなかった作品。そして公開されてから幾年月。やっとこさ鑑賞したのはいいが、今度は感想を書くのを忘れておった。お粗相さんKORO。まぁ、今さらだが感想を書いてみるぞ。

え〜、去年まではクリスマスというと決まって「ダイ・ハード」を鑑賞してクリスマス気分を盛り上げておったミーですが、今度からは「東京ゴッドファーザーズ」を鑑賞してクリスマス気分を大いに高めたいと思いますッ!巨人・大鵬・卵焼き!ギンちゃん、ハナちゃん、ミユキちゃんッ!以上、KOROの決意表明でした。ご静聴ありがとうございマシタ。…意味判んねぇよ。どうして巨人・大鵬・卵焼きが出てくるんだよ。いくつだよ、全く。気を取り直して。

まず主人公達がホームレスって時点でアニメじゃないと企画そのものが通らなかったのではないかと。確かDVDに収録されてた今監督のインタヴューでも、そんなことを語ってたような。主人公たちの設定もそうだけど内容的にもリアルな中にも結構ムチャな展開なんかがあって、こりゃ実写じゃムリだったろうなと。とにかくアニメであるという強みを最大限に生かした作品だと思う。特にクライマックスの疾走感とその後に起こった奇蹟は実写じゃ絶対ムリ。CGなんか使ったらシラけるんじゃないかなぁ。

主人公3人がすごく生き生きと描かれていて観始めてほんの数分で好感を持ってしまった。常にブータレてるミユキも最初は小憎たらしいけど、どんどん可愛いく見えてくるから不思議。ギンちゃんもハナちゃんもすごく愛しく感じてしまう。人間以上に人間臭い登場人物、コロコロと表情の変わる3人の豊かな感情表現の巧みさもさることながら、声優の力量にも大いに感じ入りマシタ。ギンちゃんを演じる江守徹はもちろんのこと、ハナちゃん役のワハハ本舗の梅ちゃんとミユキを演じた岡本綾もすごく良かった。彼らの血の通った演技のおかげで3人がより生き生きと見えてくるんだよ。梅ちゃんの「あ〜ら、アタシはただのおかまよ?」と言う台詞なんてハマりすぎ。

絵も非常に美しい。特に背景は細微に渡って描き込まれてて実写と見紛うほどの出来。3人が清子の親を探して東京の街を右往左往するワケですが、彼らが歩く街はどこか冷たい。季節が冬だからってだけではなく、どこかよそよそしい。そんな東京の街を清子の親探しの為に奔走する3人。けれど行く先々で次々と事件に巻き込まれる羽目に。車に挟まれてウンウン唸ってるおっさんに遭遇したり、ド派手なパーティに招かれたり、ドンパチ騒ぎに遭ったり。清子の親探しをしている道中で度々出会う幸運。そしてホームレスとして生きる3人が捨てたつもりの過去を実は引き摺っていたりするのも垣間見えたりして、実に味わい深いストーリー展開となっておりマス。

そしてバラバラに思えたそれらの出来事がラストでは…。ラストのあの言葉には心底、震えマシタわ。え、怖くて震えたんぢゃないですよ?感動したんですよ、感動ッ!失礼だな!ミーだって素直に涙腺が刺激されるコトだってあるんだぜ!日常生活は非道だけど映画鑑賞時はピュアなハートの女の子ちゃんなんだからッ!←“呪怨”観て爆笑するヤツがナニ言ってる。

現実世界はこの物語のようにはいかないけれど、寒い夜にはこの作品を観て、ほんわか暖かい気持ちになりたい。3人のホームレス、捨て子、クリスマス、騒動そして素晴らしい偶然と奇蹟。幸運の物語。
2003年/日本/90分/監督:今敏
東京ゴッドファーザーズ
2009.12.07記

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