セイラーとルーラ─ふたりの熱いハートは荒野を焼きつくす。
デヴィッド・リンチが描く愛の逃避行。
アメリカ南部。セイラー(ニコラス・ケイジ)は恋人ルーラ(ローラ・ダーン)の母親マリエッタ(ダイアン・ラッド)から恨みを買い、殺し屋を差し向けられるが、勢い余ってその男を逆に殴り殺してしまう。2年後、仮釈放されたセイラーは蛇皮のジャケットを手に出迎えに来たルーラと共にカリフォルニアへと旅立つ。2人の愛を妨げるものから逃れるために。だが、娘に対して異常な執着を持つマリエッタは執拗な追っ手を送り込み、2人の仲を引き裂こうとする─
徹頭徹尾、リンチ・ワールドでした。ま、ワリと薄味だけど。それでも最初から最後までヘンテコなヤツばっかり出てくる。ルーラのお母ちゃんも変だし、そんなお母ちゃんにベタ惚れの私立探偵もチンピラも変。イザベラ・ロッセリーニも逝っておりマスし、変態人間オンパレード。母娘を演じておるダイアン・ラッドとローラ・ダーンは実の親子であるワケですが。ホント、親子でナニやってんだと激しくツッコミたくなった。まともな神経持ってたら、こんなイカレポンチな作品に親子共演しようなんて思わん。
忘れちゃいけないのが終盤辺りに登場するウィレム・デフォー。並みいる変態人間の中でも彼が最高にイカレておりマス。溶けた歯でニヤニヤ笑う姿が妙にスティーヴ・ブシェミとかぶった。どっちも好物の俳優なんで無問題だけど。「FU○K○Eと言え」と囁くシーンのアホ度には呆れた。ホントに嬉々として変態を演じておりマスよ。最後もサイコーにマヌケでデフォーの変な方向に突っ走っておる役者魂に唸りマシタわ。他にも血ダラダラで「ヘアピンが!バッグが!」と騒いでおっ死ぬだけのシェリリン・フェンとか。
揃いも揃って変態人間ばっかりなんで、ワイルドなハートを持て余してるハズの主役2人が一番マトモに見えたかも。しかし、ローラ・ダーンがこんな役柄を演じてるのに激しく違和感。真っ赤なルージュとヘアスタイルも激しく似合ってない気がした。あのぶっとい眉のせいか?1980年代後半〜1990年代前半はあんなぶっとい眉とソバージュヘア(死語)と真っ赤なルージュが流行ってたような気もするが。
ニコちゃんの蛇皮ジャケットも冷静に見ればトンデモセンスなんだが、この頃のニコちゃんはそれをカッコよく見せるだけのオーラがあった。髪の毛もあったしな。彼のダサさとカッコよさの境界線ギリギリの微妙な二枚目っぷりがたまらんですたい。序盤で殺し屋をボコボコに殴り殺した後で、煙草に火を点けてマリエッタを指差すシーンに迂闊にも子宮が疼く勢いで見惚れちゃいマシタよ。…寄る年波のせいでミーの視力は逝ってしまっておるのだろうか。
クラブでヘヴィメタで踊り狂ってるかと思ったら、いきなりエルヴィス・プレスリー歌うシーンなんて唐突すぎて「なんなんなんだッ」と思いっきりツッコミましたからね。ま、ニコちゃんのなりきりぶりが凄まじいので、「もしかしてサイコーにカッコイイかも?」と錯覚させるだけのパワーはあった。きっとあったはず。髪の毛もあったし←しつこい
内容に関して言及しますと、序盤から中盤辺りまではなんともいえないドライブ感があって、目が離せないんだけど、リンチの作品ってどうしてもラストが弱い気がする。弱いつ〜か腑に落ちないつ〜か。この作品もルーラが○○を告げる辺りから失速気味。なんか急に現実的になった。KORO的には2人が逃避行しだしてまだ数日じゃないの?それって○の○なの?と変な勘繰りをしてしまったのだが。デモ、その事実を知った時のセイラーのリアクションにまた惚れそうになった。ミーもショックを受けた時はああしよう←アホ
細かいコトはおいといて。破綻しまくったストーリー、強引すぎるラスト、そしてキャストの真剣にイカレてるとしか思えないブッとんだ演技と三拍子揃ったある意味おバカ映画といいますか、とにかく狂った作品なんですが、スピードとドライブ感に満ち溢れていて作品世界に観ている者を惹きこんでしまう力があるのは確か。
頻繁に引用される「オズの魔法使い」。良い魔女、悪い魔女。ラストのセイラーが見る夢の特撮があまりにチープで興ざめしたのは確かなんだが、なんかこの作品をキライになれない。キライどころかかなり好きかも。ラストでニコちゃんがアレを歌うシーンに真剣に泣いちゃったよ。あれは惚れるわ。冷静な判断力と理性を持って観てれば大爆笑もんのラストなんだが、妙に納得させられてオマケに泣いちゃうというのはデヴィッド・リンチの才能によるものなのか。暴力シーンやセックスシーンがグロで過激だけど、ロマンティックな作品だと思う。
1990年/アメリカ/124分/監督:デヴィッド・リンチ
WILD AT HEART
2010.04.11記