許されざる者

1880年のワイオミング。かつて列車強盗や殺人など数々の悪事を働き、悪名高かったウィリアム・マニー(クリント・イーストウッド)だったが、今では銃を捨て酒も断ち、2人の子供と農場を営みながら静かに暮らしていた。しかし3年前に自分を真人間にしてくれた愛妻に先立たれ、家畜や作物は順調に育たず貧しい生活を送っていた。

そんな彼のもとにスコフィールド・キッド(ジェームス・ウールヴェット)と名乗る若いガンマンが訪ねてくる。娼婦に重傷を負わせながら、大した罰も受けずに済んだ2人のカウボーイに1,000ドルもの賞金が賭けられたらしい。キッドはマニーと組んで、その賞金を手に入れようと考えていたのだ。

11年もの間、銃を手にしていないマニーはキッドの申し出に戸惑うが、子どもの将来のために金は欲しい。マニーはかつての相棒ネッド・ローガン(モーガン・フリーマン)、キッドと共に娼婦たちの住むビッグ・ウィスキーへと向かうが、その頃町では保安官のリトル・ビル・ダゲット(ジーン・ハックマン)が疎ましい賞金稼ぎを袋叩きにしていた─


最後の西部劇と銘打たれた作品。エンド・クレジットの“セルジオとドンに捧ぐ”という言葉にジ〜ンときた。西部劇に強い思い入れはないし、大して作品も観ちゃいないが、彼らの功績は知ってるし、イーストウッドが師と仰いでいたのも有名な話。しかし、この作品は西部劇と謳ってはいるが、派手にドンパチを繰り広げるワケではなく、全編を通して静謐な雰囲気の作品であります。

この作品は第65回アカデミー賞の作品賞・監督賞・助演男優賞・編集賞を獲得。デモ、ミーがこの作品を観たのはアカデミー賞受賞作品だからではありマセン。渋い爺てんこ盛り作品だからデスッ!イーストウッド爺にモーガン・フリーマン、リチャード・ハリスにジーン・ハックマンまで出てるんだぜ!うひょ〜ッ!観なくてどうする!つ〜ことで張り切って観た。爺勢ぞろいでウットリ。若造のスコフィールド・キッドなんて眼中にないぞ。ちっこいしな。爺たちは揃いも揃って大男揃い。マニーがダゲットのコトを「大柄の男」と称した時は「アンタも間違いなく大柄だろうがッ」と軽くツッコんでみたり。リチャード・ハリスは伝説的なガンマンのイングリッシュ・ボブを演じてるんだけど、出番がほんの数分程度でかなり淋しい。しかも、いいトコなし。ホント浮かばれん役。

ジーン・ハックマンがこの作品で助演男優賞を獲得したのには正直、驚いた。KORO的には「クライング・ゲーム」か「ア・フュー・グッドメン」の助演男優が獲ると思ってたんだよね。ジーン・ハックマン扮するダゲット保安官はそんなに悪徳保安官ってカンジがしないんだけど。確かに横暴だと思うけど、町を守るためにやってる感があるんで、それほど憎たらしく見えなかった。大工の腕は最悪だけどな。

漏れ聞いたところによりますと、イーストウッド爺はこの映画の脚本を製作の10年以上前に既に買い取っていたとか。で、主人公のマニーと同じ年齢になるのを待って製作したらしい。KOROちゃん、小さな疑問が。つ〜ことはマニーは62歳ってこと?62歳で子どもが10歳そこそこ?3年前に亡くなった妻は享年29歳ってなってたんですけど?年齢だけじゃなく、お盛んぶりも同じということか←余計なお世話

KOROの下世話な疑問はおいといて。イーストウッド爺がいつものように淡々とマニーを演じてるので、正直、クライマックス部分はあんまり迫力が感じられなかった。どうにもマニーが怒りに打ち震えてるカンジが伝わってこない。イーストウッド爺が糸目で表情が読み取れないせいなのか。まぁ、気負いを感じさせずに淡々と無表情にハードなコトをやってのけるのがイーストウッドの持ち味だし、そこが彼のカッコイイとこだしな。受け付けない人は全くダメでしょうが。ミーはけっこう、そんなイーストウッドが好きですわ。マニーが酒場の入り口に音もなく現われるシーンでは漏らしそうになるくらい震えたぞ。カッコイィぞ!爺!やっぱりサマになるわ!

あぁ、いつものようにとりとめのない文章になっちまった。全然、内容について触れてないよ。気を取り直しまして。この作品、西部劇とはなっていますが暴力礼賛作品では決して、ない。声高には謳ってないが、ストーリーのそこかしこに逆に暴力に対する批判がある。暴力に幻想を抱く若者キッドに過去の武勇伝を決して語ろうとしないマニーとネッド。イングリッシュ・ボブの伝記小説を書こうとしている作家に「早撃ちなんて意味がない」と言い切るダゲット。ヒロイックな暴力など、ない。クライマックスのマニーの行動も決して肯定されるべき行為ではない。

観終わった後にカタルシスはないけれど、非常に考えさせられる作品。誰もが許されざる者。娼婦を傷つけたカウボーイも、彼らに賞金を賭けた娼婦たちも、ダゲット保安官も、そしてマニーさえも。
1992年/アメリカ/131分/監督:クリント・イーストウッド
UNFORGIVEN
2009.12.13記

「水ぐらい飲ませてやれ!撃ちはしない!」
アイ★ラブシネマTOPに戻る