容疑者Xの献身

その謎を、愛そう。ガリレオが苦悩する、その謎とは?

東野圭吾原作の「容疑者Xの献身」の映画化。

ある冬の朝、貝塚北署管内で男性の死体が発見される。全裸で顔は潰され、指も焼かれていた為、身元の特定は困難に思われたが、ほどなく富樫慎二という無職の男だと判明する。貝塚北署の刑事である内海薫(柴咲コウ)は先輩の草薙俊平(北村一輝)と共に、被害者の元妻の花岡靖子(松雪泰子)の元へ聞き込みに向かう。

だが、捜査陣が第一容疑者と疑う彼女には完璧なアリバイがあった。靖子のアパートから去る際に隣の住人である石神哲哉(堤真一)と出会い、彼が帝都大学出身であることを知る2人。捜査に息詰まった内海と草薙は“ガリレオ”こと物理学者の湯川学(福山雅治)に協力を仰ぎに行くが、その際に石神が湯川の学生時代の友人だったことが判明する。冴えない風貌で現在は高校の数学教師をしている石神だが、彼は湯川が「僕の知る限り、本物の天才」と評するほどの頭脳の持ち主だった。やがて、湯川は石神がこの事件に深く関わっているのではと疑い始めるのだが─


東野圭吾氏の原作は読んでおるワケですが。TVシリーズの「ガリレオ」は未鑑賞。TVっ子じゃないもんですから。福山くんはキライじゃないけど、役者としての彼はどうなんだろうと。ほとんど彼が出演してる作品を観てマセンから。連続ドラマを観る根性がないので「ひとつ屋根の下」とかも観てないのよ。ついでにKORO的に福山くんは湯川さんのイメージじゃないんだよね。デモ、TVシリーズとは違って映画版はより原作に近いイメージの湯川さん像らしいということで当作品を観てみた。

…だるまの石神はどこだ。いや、堤真一は頑張ってたと思うよ。髪の毛ボサボサで猫背で唇なんかガサガサで服装もダサいし。デモ、元がイイ男だから、ちょっとした拍子に二枚目ぶりが出ちゃうのよ。ミー的にはドランクドラゴンの塚地とか、それか工藤を演じたダンカンの方が石神だよ。それと福山くんの湯川さんも違和感。あんなにおしゃれなワケがないッ。

キャラクタの文句はこれくらいにして。内容ですが。悪くはなかったと思う。原作をほぼ忠実に再現してたと思うし、原作では意図的に隠された推理の手掛かりを映画では上手く表現していた。堤真一や松雪泰子の演技も光ってた。娘役の女の子も非常に良かったと思う。だが、そのおかげなのか主役であるはずの福山くん演じる湯川が霞んでしまっている。彼が石神を疑うきっかけ、そして謎を知ってしまった時の苦悩がいまいち伝わってこない。それと唐突に雪山に登るのも謎。原作で雪山登山のシーンなんて、あったっけ?ほんの4〜5年前に読んだ作品なのに細かい点を忘れちまったよ。

ミーは東野圭吾氏の作品が好きでけっこう読んでいるけれど、この映画の原作である「容疑者Xの献身」は手放しで賞賛出来ない部分があるワケですよ。ミステリ的にフェアじゃないという点ではなく、石神の行動に。泣けてきて、泣けてきて。感動の涙じゃなくてやりきれない涙。ミーが靖子の立場で全てを知ってしまったら、あまりの重さに重度の鬱になるわ。ま、原作の靖子は映画とは違って、心の奥に強かさを秘めてたような気がするが。

松雪泰子は幸薄そうなカンジが良かった。痩せすぎでギスギスしたカンジがするのはKORO的に減点ですが。靖子はもうちょっと肉感的な女性だと思ふ。しかし演技は天晴れ。細かな感情の機微、内面の揺れ動きを見事に表現してたと思う。「富樫が石神さんに替わっただけじゃないッ!」と叫ぶシーンに震えましたわ。

堤真一もほとんど感情表現をすることがないワケですが、ほんのちょっとした仕種に靖子に対する気持ちが表れてて涙を誘う。だが、やっぱり雪山に湯川を誘う気持ちはワカラン←しつこい

あ、柴咲コウ。何故か彼女の台詞だけ、とんでもなく陳腐でかなり気持ちが萎えた。こんな時にそんなこと言うのかよッ!空気の読めない女だな!というシーンが数箇所あって、もしかして脚本を担当した福田靖は柴咲コウがキライなのかと勘繰りマシタよ。どうも彼女の持ち味である飄々とした演技はこの作品では浮きまくりなカンジ。すごい大根にしか見えマセンでしたわ。

ラストの慟哭にはもらい泣きしてしまったが、エンディングロールに流れるシーンが蛇足で涙ひっこむ。
2008年/日本/128分/監督:西谷弘
容疑者Xの献身
2010.01.01記

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