ファントム・オブ・パラダイス

ブライアン・デ・パルマ監督が「オペラ座の怪人」をロック・ミュージカルにアレンジした異色作。

スワン…名前はそれだけだ。彼は今、新しい音を探している。彼自身の夢と憧れであるロックの殿堂“パラダイス”のために。この映画はその音を捜し求める物語。

容姿は冴えないが天才的なセンスを持つ作曲家ウィンスロー・リーチ(ウィリアム・フィンレイ)。デス・レコードの社長であるスワン(ポール・ウィリアムズ)と出会ったことにより、彼の運命の歯車は大きく狂いだす。自分の曲を盗まれた上に無実の罪を着せられ、投獄。決死の思いで刑務所から脱獄したウィンスローだったが、レコードのプレス工場に忍びこんだ際にプレス機に挟まれ、顔半分を押しつぶされてしまう。二目と見られる醜い顔。声も潰され、もう二度とは歌えない。憎い、憎い!スワンが憎い!ウィンスローは仮面を被った怪人と化し、スワンに復讐を誓う。俺の魂を返せッ!スワンに詰め寄る怪人ウィンスローだったが、またもスワンは言葉巧みに取引を持ち掛ける。スワンが建設した大劇場パラダイスで行われるミュージカルのオープニングをウィンスローの曲で飾ろうというのだ。スワンの邸宅で知り合った新進女性歌手フェニックス(ジェシカ・ハーパー)に歌わせることを条件にその契約を結ぶウィンスロー。それが悪魔との契約とも知らずに…


はい、1974年の作品です。妙にカルト化されている作品です。原色バンザイな作品です。色んな方に多大な影響を与えているといわれております。劇中に登場するバンドの名前がジューシー・フルーツだったり、「ルパンVS複製人間」のマモーがスワンをモデルにしてたり。ロック・オペラでサスペンスでホラーでロマンスです。画面ニ分割などのいわゆるデ・パルマカットも満載です。

ロック・ミュージカルの傑作と言われているようですが、KORO的には劇中の音楽に激しく心を動かされなかった点が残念。まず冒頭のジューシー・フルーツが歌うシーンがいまいち。なんつ〜か歌声が好きになれんのだわ。フェニックスの歌声も素晴らしいとは言いがたい。魅力に欠けるのよね。歌ってるシーンがことごとくインパクトが弱いんだわ。ロック・オペラだけど、音楽そのものよりもファッションや脚本の妙の方が光ってたような気がする。中盤に登場する奇天烈ロック・シンガー、ビーフちゃんが歌うシーンは大好きですけど。ピンクのカーラーつけて爪を噛むビーフちゃんがカワエェ。スッ転んでジタバタするビーフちゃんが愛しくてたまりませんよ。

音楽はミーの好みではなかったが、前半のスピーディーな展開とデ・パルマお得意の分割画面にうっかり騙され(?)、主人公であるウィンスローがやたらとキレやすくて、バンバン人をブチ殺していくにも関わらず、何故か感情移入してしまうキャラでどんな結末が彼を待っているのかと気になり、ラストまで一気に観てしまう。音楽的魅力はやや薄いがキッチュ色満載の映像とガンガンいっとけみたいなドライブ感に乗せられて、実は何度も鑑賞しております。ビーフちゃんの痺れる姿が大好きですから。

ビーフちゃんや怪人ウィンスローのキャラもいいんだが、それ以上に異様な風貌とオーラを発揮したスワンを演じるポール・ウィリアムに脱帽。フェニックスとスワンのベッドシーンはある意味、必見ですよ。変な匂いとかしてきそうな場面ですよ。甘い曲が流れる中、雨に打たれながらその様子を見つめるウィンスロー。怪人に見つめられながら、とっちゃんぼうやスワンとフェニックスが繰り広げるラブシーン。とんでもなくいけないもんを見ちまった。そんな気分にさせてくれるシーンです。オペラ座の怪人とファウストをモチーフにしてショービズ界の汚くて怖い裏側を描いた作品ですが、KORO的には怪人の素顔よりスワンの童顔と突き出た下ッ腹の対比の方がコワイ作品でありマシタ。
1974年/アメリカ/94分/監督:ブライアン・デ・パルマ
PHANTOM OF THE PARADISE
2009.03.04記

「生きたところで負け犬、死ねば音楽ぐらいは残る」
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