キャリー

キャリーをいじめないで!彼女が泣くと恐しいことが起こる…

アメリカ、メイン州の高校に通うキャリー(シシー・スペイセク)は冴えない容姿と内気な性格、おどおどした物腰のため、いつもクラスメイトたちからいじめを受けていた。キャリーの感情が昂ぶるとその周囲のものが勝手に動いたり、電気がショートしたりと異常現象が起きるため、たった一人の肉親である母マーガレット(パイパー・ローリー)にも疎まれ、家庭でも居場所のない日々を送っていた。

ある日の体育の授業後にシャワーを浴びていたキャリーは17歳にして初潮を迎える。狂信的なキリスト教信者で性を罪悪視し、肉体の成長は邪まな心の現われだと信じて疑わない母から月経について何も教えを受けていなかったキャリーはパニックを起こす。そんな彼女の様子を見てはやし立てる同級生達。騒ぎを聞きつけた担任の女性教師により騒ぎは収拾されるが後日、キャリーをいじめたクリス(ナンシー・アレン)たちに罰としてプロム・パーティへの参加禁止もしくは体育の補習授業をするように言い渡した。渋々、補習授業を受けるクリスだったが、過酷な授業に耐えかねて逃げ出してしまう。おかげでプロム・パーティには参加禁止。こうなったのはキャリーのせいだと逆恨みするクリス。

一方、今回の騒ぎで今までの態度を反省したスー(エイミー・アーヴィング)は罪滅ぼしとしてボーイフレンドのトミー(ウィリアム・カット)にエスコート役のいないキャリーをパーティに誘うように頼む。学校一の人気者のトミーの誘いをはじめはからかわれていると思って逃げ出したキャリーだったが、自宅にまで訪れて真摯な態度で誘うトミーに怯えながらもついには承諾するキャリー。しかし、この出来事がさらにクリスのキャリーへの憎しみを募らせることになる。

そしてプロム・パーティの当日。トミーにエスコートされ喜びと不安が入り混じった面持ちで頬を紅潮させるキャリー。彼女をいじめないで。彼女が泣くと恐ろしいことが…


スティーヴン・キングの作家デビュー作の同名小説を映画化した作品。うん、数あるキング原作の小説の映画化の中でこれが一番怖い。ホラー不感症気味のミーですがこの作品はかなり怖い。初めて観た時は真剣に絶叫した。あんなに飛び上がったエンディングは後にも先にもないぞ。うなされたわ。漏らすかとオモタわ。シシー・スペイセクのその年齢不詳の不気味なファニー・フェイスが恐怖心を煽る。当時26歳だったにも関わらず、17歳の高校生を見事に演じきってアカデミー主演女優賞にノミネート。ついでに狂信的な母親役のパイパー・ローリーも助演女優賞にノミネートされたなぁ。

学校で、家庭で辛い目に合うキャリーの毎日。感情が昂ぶると意志には関係なく周囲では電気がショートし、家具は勝手に動き出す。そんなキャリーを邪悪なものでも見るかのように蔑む母。キャリーの冴えない容姿をからかい、陰湿ないじめを繰り返すクラスメイト。そんな中、夢のような出来事が。学校一の人気者トミーにパーティのパートナーとして申し込まれちゃいますよ。パーティ当日。それまでの冴えない風貌はどこへやら。せっせと手作りしたドレスを着込んだキャリーの可憐なことといったら。そしてその後に起こるあまりにも残酷な出来事。それまでのおどおどしながらも愛らしかった表情から一転してかっと目を見開き、秘めた力を解き放つ時の別人としか思えないキャリーの表情が今でも忘れられマセンよ。阿鼻叫喚ですよ。デ・パルマ節全開の分割画面が異様な迫力を醸し出しておりマシタ。

しかし。よくよく考えてみるとこの作品はホラーというよりも悲しいお話だな。狂信的な母親に育てられたために苛められ、しかし母親の言うことは絶対だと信じているキャリーが初潮を迎えたのを機に母親の支配から飛び立とうとする。揺れ動く思春期の乙女心。しかしキャリーはただの思春期の女の子じゃなかったのが悲劇。純粋な心と特殊な力を持っていたために引き起こる惨劇。いや、クライマックスのあの阿鼻叫喚もキャリーの胸の内を考えると悲劇だな。悲しき青春映画。

シシー・スペイセクとパイパー・ローリーが群を抜いた鬼演技ぶりですが他のキャストもご老体KOROにとってはなんとも味のある人ばかり。この作品の数年後にデ・パルマと結婚するナンシー・アレンが胸糞悪いくらいに根性の曲がったクリスを好演しておりました。爽やか高校生トミー役でウィリアム・カットが出ているのも嬉しい限り。後にスピルバーグと結婚→離婚して小市民KOROには想像出来ないようなスゲェ額の慰謝料をふんだくるエイミー・アーヴィングもこの作品の頃はまだあんまり目と目の間が離れてなくて可愛いかも?と思える。
1976年/アメリカ/98分/監督:ブライアン・デ・パルマ
CARRIE

「ジョン・トラボルタも同級生役で出演。ケツ顎高校生」
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