ミザリー

あなたが殺したミザリーを私が生きかえらせてあげる。

雪山で事故に遭遇した人気作家が読者の女性に救われ、一命を取りとめる。身動きの取れない作家は彼女のロッジで献身的な看護を受けるがNo1ファンを自称するその女性は次第に狂信的な本性を露わにしていく。閉ざされた雪山のロッジ。身動きの取れない主人公。狂信的な読者。スティーヴン・キングが贈るクローズドサークル恐怖物語。

恋愛大河小説「ミザリー」シリーズという超ベストセラーの作者であるポール・シェルダン(ジェームズ・カーン)は、「ミザリー」シリーズを書き続けることにうんざりしていた。そこで主人公のミザリーを死なせることで終止符をうつことを決意し、コロラド山中のロッジにこもって最新作を書き上げる。しかしその原稿を携えて車で猛吹雪の中、ニューヨークのエージェントのもとへと向かう途中で雪道から転落してしまう。寒さと激痛に悲鳴を上げ、やがて意識が遠のいていくポール。そんな彼が次に目を覚ますと、そこは清潔で暖かな寝室。そのロッジの住人である元看護婦でポールの熱烈なファンだと名乗るアニー・ウィルクス(キャシー・ベイツ)が瀕死の彼を発見し、助け出してくれたのだ。両足を骨折した彼を元看護婦の知識を生かし、適切な処置を施してくれたアニーに感謝するポール。しかし「ミザリー」シリーズのNo1ファンを自称するアニーに最終巻の結末を知られたことからそれまでの優しく献身的だった彼女の態度が一変する。ポールを支配し、思うようにならないと途端にキレるアニー。身の危険を感じたポールは不自由な身体ながらも必死に逃亡する術を探るのだが…


怖ぇ〜よ〜ッ!冬のサスペンスっていったら、やっぱり「ミザリー」だろってことで再見したが何度観てもチビりそうになるよぉ(泣)。キャシー・ベイツが鬼演技。嬉々として「私、アナタをストーキングしてたのよ♪」とこともなげにおっしゃるアニーにドン引き。このオバチャン。笑うと意外と童顔で「カワイイかも?」とか思っちゃうんだよ。ところが、アナタ。スイッチ入ったら、もう大変。「恐怖のメロディ」のイヴリンを凌ぐ強烈なキレっぷりに色んなトコが縮み上がりますよ。一見、丁寧な扱いなんだが実は死刑囚となんら変わらない待遇のポール。雪道をノーマルタイヤで走るからだよ。自業自得だよとか責めちゃ、あまりに可哀想か。この作品でキャシー・ベイツはアカデミー主演女優賞を獲得したワケですが、審査員のみなさんはキャシー・ベイツにあげとかなきゃ○の○を○○れると怯えたのでしょうか。いや、貫禄の演技っぷりで彼女の受賞自体にはなんの文句もないんだけど、それまでのアカデミー賞の傾向からいくと違和感を拭えないつ〜か。ま、それはともかく。

ほぼ全編、ジェームズ・カーンとキャシー・ベイツの2人きりしか出てないのに飽きさせない展開に脱帽。どっこからどう見ても見目麗しくナイ、おっさんとおばはんが主人公なのに目が離せませんよ。「ゴッド・ファーザー」の鉄砲玉息子ソニーを難なく監禁するアニーに平伏ですよ。ドン・コルレオーネも真っ青。優しい時とキレた時の落差がたまらん。初めのうちはどこまでも優しいんだけど、言葉の端々に人をゾッとさせる狂気が潜んでいる。はっきりとは気付かないが微妙な違和感。そして「ミザリー」の結末を知ったアニーの怒髪天をついたキレっぷり。誰も止められません。支離滅裂っぷりが見事過ぎます。デモ、ただのキレるおばちゃんじゃないトコがスゴい。意外と繊細なのよ。地味に几帳面なのよ。アニーの仕事っぷりがプロに徹してて容赦ないつ〜か。ミーなら多分、すぐ諦めマス。○の○を○○れた時点でショック死です。あのシーンはマジで飛び上がったぞ。笑顔でベッドの周りに○○○を○○シーンもかなり恐怖度高し。笑顔でそんなコトしちゃ、いやん。

キャシー・ベイツの鬼演技ばかりが注目される当作品ですが、実はジェームズ・カーンの地味に苦痛に耐えるシーンがあったればこそと思ったり。あの暴れん坊ソニーが恐怖に縮み上がり、脂汗流しながら必死に痛みに耐える表情が余計に恐怖心を煽るのよねぇ。

出演者も少なく、舞台はほぼアニーのロッジ内と地味な作品ですが逃げ場のない恐怖を描ききった展開は秀逸。冬になると思い出してしまうサスペンス・スリラーの名作。
1990年/アメリカ/108分/監督:ロブ・ライナー
MISERY
2008.12.30記

「日本の舞台版でアニー役を渡辺えり子が演じたと知って吹いた。似合いすぎ」
アイ★ラブシネマTOPに戻る