ニルヴァーナ

悲しみを覚えた仮想生命。アカデミー賞監督ガブリエレ・サルヴァトレスがおくる不思議な近未来。

2050年のクリスマス。オコサマ・スター社の売れっ子ゲームデザイナーのジミー(クリストファー・ランバート)は1年前に突然失踪した恋人リザ(エマニュエル・セニエ)のことが忘れられず、孤独な日々を送っていた。彼女は何故突然消えたのか。彼女が残していったビデオ・レターに失踪の理由と彼女の消息の手がかりを求めるが未だ答えは見つからない。

新作「ニルヴァーナ」の発売を数日後に控えたある夜、ジミーはゲームのキャラクターであるソロ(ディエゴ・アバタントゥオーノ)がコンピュータ・ウィルスに侵され、独自の感情を持ち始めたことに気付く。ゲームの中で何度も繰り返される同じ会話、生と死に疲れ果てているソロは「もうゲームオーバーはイヤだ、俺を助けて欲しい」とジミーに懇願する。このままゲームが発売されれば、またソロは何十万回となく生と死を繰り返さなければならない。ソロを助ける為にジミーはオコサマ・スター社のホストコンピューターに侵入し、「ニルヴァーナ」のプログラムを消去しようと決意する。しかしそれには優れたハッカーの存在が必要だ。「ニルヴァーナ」を消去する為、消えたリザの足跡をつかむ為、ジミーは旅立つ…


え〜と、いくら自分が作ったキャラとはいえ、ムサいおっさんを助けようとは思いません。とゆ〜かソロがマリオに似すぎ。ミーだったらリンク似のピチピチ青年のお願いとかゼルダ姫似の可憐な少女のお願い以外は却下!そんなワケで微妙にジミーに感情移入出来ず。しかしそこ以外はミーの魂を激しく揺さぶる素晴らしい作品だったと思いマス。

まずジミーの勤める会社の名前がオコサマ・スター社ですって!ジミーを助けるハッカーのジョイスティック(セルジオ・ルビーニ)なんて両目を売って、かわりに電子アイを移植してたり。同じくジミーを助けるナイマ(ステファニア・ロッカ)は記憶移植の障害で1年以上前の記憶を失くしてたり。サイバーパンクだわ。後半のハッキングシーンも雰囲気としては「ディスクロージャー」に似てますがこちらの方が断然洒落てマス。

基本的にセットと演技のみでバーチャル空間を表現してるんですが、これがイイのですよ。CGを駆使したハイテクなシステム内部を探っていくのではなくて、ヨーロッパ風の古びたホテルを歩きつつ探検していくってカンジ。なんだかRPG気分満喫。ミーの好きなエッシャーの騙し絵の世界に迷い込んだような不思議な雰囲気デシタ。それと侵入するハッカーを“エンジェル”、それを撃退するプログラムは“デビル”と劇中では呼ばれてるんですが、デビルのひとつとして現れるあるものによってジミーの心が大きく揺れるシーンなどは涙モノ。

前半は演出に難アリで多少退屈ですが、恋人に去られ、人生の意味を見失っているジミーにソロが「人生がただの虚構だったらと想像してみろ」、「同じことの繰り返しでは希望がない」と嘆き、その言葉を噛みしめるうちに、ジミーが現在の抜け殻のような人生から新たな一歩を踏み出そうと決意するところなどはシニカルでいいなと思いました。主人公を立ち直らせるのが、生身の人間ではなくて仮想現実のキャラというところが。

なぜか彼が出てるだけで妙にB級くささが漂うところが大好きな(褒めてるのか?)、クリストファー・ランバートの硬質な雰囲気が冷たい印象の世界観と見事に調和してて彼の出演作品の中でサイコーに気に入ってる作品です。ジョイスティックも強烈なキャラで彼1人でサイバーパンクティストが大いに上昇だし、ナイマもジミーとのあるシーンで切なくさせてくれるしで最近のサイバーパンクものでは出色の出来。あぁ!出番は少ないですがジミーの元恋人リザ役のエマニュエル・セニエが相変わらずステキ。ファム・ファタル。
1996年/フランス・イタリア/113分/監督:ガブリエレ・サルヴァトレス
NIRVANA

「マカロニ野郎!」
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