ニュー・シネマ・パラダイス/完全オリジナル版

劇場公開版とは趣が大きく異なる完全版。

ローマ。深夜に帰宅した映画監督のサルヴァトーレ・ディ・ヴィータ(ジャック・ペラン)は留守中に母マリア(プペラ・マッジオ)からアルフレード(フィリップ・ノワレ)が亡くなったという連絡があったことを聞かされる。アルフレード。その名前を耳にした途端、サルヴァトーレの脳裏にはシチリアのジャンカルド村で過ごした少年時代が蘇るのだった。もう30年以上も故郷には帰っていない─。

少年時代のサルヴァトーレ(サルヴァトーレ・カシオ)はトトと呼ばれ、母と妹の3人暮らしだった。戦争に行ったまま、帰ってこない父を待つ一家の暮らしは決して楽なものではなかった。そんなトトを魅了してやまないのは村に一軒だけある映画館“パラダイス館”で映画を観ること。そして映写技師のアルフレード。映写室に隙あらば忍び込もうとするトトをきつく叱るアルフレードだったが、いつしか2人の間には年齢を越えた友情が芽生えていく。トトは映写室でカットされたフィルムをアルフレードから貰い、宝物として大事に集めるのだったが─


なんでも完全版がヨイとは限らない。チラリズム精神を忘れてはいけない。それじゃそういうことで〜。A domani★

うむ、短い。感想にもなってない。なんつ〜か。編集の仕方でこんだけ作品の印象が大きく変わるもんなのかねと驚いた。劇場公開版では“パラダイス館”がストーリーの中心になってるのに、この完全版ではサルヴァトーレの人生に焦点が当たってる。ミーは劇場公開版も観たコトがあるとは思うんだけど、けっこう昔なんで細かい内容を忘れてた。感想も書いてないしな。で、完全版もあるんだから観てみるかと再鑑賞するつもりで観てみたら。タイトルが同じなだけで違う作品かとオモタ。デヴィッド・フィンチャー監督の「ゾディアック」だと思って観たら、タイトルが同じの劇場未公開版を間違って選択した時みたいに。「トランスフォーマー」だと思ってDVDレンタルしたら、実は「トランスモーファー」というパチもんだったみたいな←それは知ってて借りただろ。

どうも巷ではこの完全版の評判はすこぶる悪いようですが、ミーはそれほど悪いとは思いマセンでしたよ?…別に壮年時代のサルヴァトーレを演じたジャック・ペランがお好みのタイプだからじゃないわよ!確かにエラくサルヴァトーレと彼の恋人だったエレナのその後にやたらと時間を割いてストーリー後半は三流メロドラマ調になってる感は拭えないが、これはこれでアリなんじゃないかなぁと思うワケで。

劇場版はたしかに素晴らしい作品だと思う。デモ、はっきり言えば美しすぎるかも。ミーはどっちかというとドロドロした内容の作品の方がお好みなんで、この完全版も意外とキライじゃない。アルフレードは気のいいおっさんという面だけでなく、生きていく苦しさや辛さを味わった初老の男という面も見せる。完全版は人生について、愛について真正面から向き合っているといいますか。少しでもその本質に近づこうともがく人間を描く姿勢は評価したい。

ジュゼッペ・トルナトーレ監督が本当に撮りたかったのは美しい映画ではなく、人間らしい映画だったとは思うけど、やっぱり50分ほどカットして公開したのは興行的には正解だったかも。完全版は全てを説明しようと頑張っているけど、どうしても冗長すぎて名作に成り損ねた印象が拭えない。やっぱり○○○の登場は蛇足かなぁ。

劇場版を観たあとでオマケ的感覚で観る分にはヨイかと思う。編集の良し悪しでこれだけ作品の印象が変わるものなのかというのを知る意味では非常に勉強になりマス。
1989年/イタリア/173分/監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
NUOVO CINEMA PARADISO
2010.04.03記

「私は年寄りだ。お前とは話さない。お前の噂を聞きたい」
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