スーパーマン リターンズ

1987年の第4作から約18年ぶりに製作されたスーパーマンシリーズ作品。

クリプトン星のゾッド将軍ら3悪人との戦いに勝利したクラーク・ケントことスーパーマン(ブランドン・ラウス)だったが、故郷であるクリプトン星の残骸が発見されたと聞き、地球に乗ってきた宇宙船に再び乗り込み、一人宇宙への彼方へと飛び立つ。愛するロイス・レイン(ケイト・ボスワース)に別れを告げられないまま…

そして5年後。何一つ残っていない宇宙墓場と化した故郷から地球へと戻ってきたスーパーマンは変わってしまった地球に困惑する。スーパーマンが姿を消して以来、犯罪は増加の一途を辿り、世界各国では紛争が絶えなかった。そして変わらずにいてくれると信じていたロイスさえも母となり、リチャード(ジェームズ・マースデン)という婚約者がいる身となっていた。しかも彼女は「スーパーマンは何故不要なのか?」という記事でピューリッツァー賞まで受賞していた。

そんな中、宿敵レックス・ルーサー(ケヴィン・スペイシー)も仮釈放が認められて出所していた。ルーサーは北極にあるスーパーマンの“孤独の要塞”に忍び込み、クリプトンの科学の結晶であるクリスタルを盗み出し、ある途方もない計画を企てていた─


クリストファー・リーヴ主演のシリーズ第3作と第4作がなかったことにされてる当作品。期待されたワリには興行的に振るわず、続編の製作どころか配給元のワーナー・ブラザーズから新たなシリーズ3部作の構想が発表されて、この作品の存在自体も“なかったこと”にされてしまったという可哀想な作品なワケですが。

まぁ仕方ないかもな。目新しさがないもん。ミーは公開直後に鑑賞したんですが、キレイさっぱり内容を忘れて再鑑賞した際にどのシーンにも見覚えがなかった。主役のスーパーマンは5年ぶりに帰ってきたら、ストーカーマンに変貌してたし。監督のブライアン・シンガーがスーパーマン作品でさえ変態趣味を抑えられなかったのが敗因かもなぁ。

ブライアン・シンガーは「X-MEN」も撮ってるし、アメコミ好きなのかも知らんが、はっきり言って「スーパーマン」の監督には向いてないと思う。スーパーマンは健全ヒーローだもん。誰よりも強く、誰よりも速く、どこまでも正義!そして健全!それなのにシンガー版スーパーマンは5年ぶりに地球に戻ってきてやることといったらストーキングですから。そんなのスーパーマンじゃねぇよ。悪党どもによってたかっていたぶられて泥水まみれになってるスーパーマンなんて見たくねぇよ。ついでにヒロインに対する扱いもエゲツない。情け容赦ない暴力描写に開いた口が塞がりマセンでしたわ。妙に生々しい。

そして見せ場よりもお話を重視する姿勢。おかげで話が長い、長い。大して中身はないのにストーカーマン状態のスーパーマンをエラくご丁寧に描写したおかげで2時間半超え。ついでにストーカー野郎をロマンチスト扱いするのにも参った。○○の存在もあざとすぎてイヤ。

ブライアン・シンガーの変態嗜好がやや鼻をつくが、冒頭の飛行機救出シーンは見事。10数分間ノンストップで見せる、見せる。スーパーマンの活躍ぶりもいいね。5年ぶりに姿を現したスーパーマンを見つめる人々。やたらと感動的。この掴みのシーンに期待は高まったワケですが、それからの展開は正直、かったるい。

敵役をレックス・ルーサーにしたのにまず疑問。ケヴィン・スペイシーは好演してたが、レックス・ルーサーに拘ってしまったせいか展開に目新しさがない。他にもスーパーマンが退治しないといけない悪党はいると思うのだが。

ブランドン・ラウスは正統派二枚目だし、体格も素晴らしく概ね満足ですが、クラーク・ケントの時もどっからどう眺めてもイイ男なのが残念。クリストファー・リーヴと比べてしまうのは可哀想だが、オトボケ演技はちょっと弱いかも。

KORO的に一番可哀想だったのはロイスの婚約者であるリチャード。ホントにイイ人なのに報われない役回りで、そのあまりの哀れさに貰い泣きした。彼があまりイイ人過ぎるんでロイスがビッチにしか見えん。この二股女がッ。

スーパーマンが5年ぶりに戻ってきたと同時にクラーク・ケントも帰ってきたというのに、誰もクラークの正体を疑わない点や、街が危機に襲われた時の描写がやたらとクドくて他に見せ場は作れんのかと辟易とした点、レックス・ルーサーの陰謀やクリプトナイトの扱いが前作とほぼ同じで新鮮味がない点、2作目でのロイスとスーパーマンの○○は○○を修正されたんじゃなかったっけ?という疑問などツッコミどころ満載ですが、ジョン・ウィリアムスのテーマ曲が流れると無条件に心躍ってしまうのはミーが旧世代故なのか。

ブランドン・ラウスの凛とした立ち居振る舞いは颯爽としていて好感度が高いし、ロイスのビッチぶりにケチをつけはしたが格段に魅力的なヒロインになったのは確か。ブライアン・シンガーのヒーローの弱点をやたらと強調したがる性癖が控えめだったら、もっと良い作品になったのではないかと思う次第。
2006年/アメリカ/154分/監督:ブライアン・シンガー
SUPERMAN RETURNS
2010.01.02記

「息子は父に 父は息子に還る」
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