ダークシティ

闇の都市に渦まく謎の複合体

奪われた愛の記憶が、この闇のどこかにある…

男が目を覚ますと、そこは見覚えのない浴室のバスタブの中だった。なにも思い出せない。どうしてここにいるのか。自分が誰なのかさえも。浴室を出た彼が見たのはベッドの傍に横たわる女の死体。その胸には螺旋の模様が刻まれていた。自分が殺してしまったのか?いきなり鳴る電話。出ると見知らぬ男の声が言う。黒いコートの男達がまもなくやってくる。彼らから逃げろと─。記憶を失ってしまったその男、ジョン・マードック(ルーファス・シーウェル)は事情が呑み込めないまま、その場を逃げ出す。やがて連続娼婦殺人事件の犯人として追われていることを知ったマードックだったが、記憶を失っているとはいえ身に覚えがない。彼につきまとう黒いコートの一団。夜中になると一斉に眠りにつく住民。変貌する街並み。誰もが曖昧な記憶しか持っていないこの街では一体、なにが起こっているのか?主治医だと名乗る精神科医シュレーバー(キーファー・サザーランド)、妻のエマ(ジェニファー・コネリー)、そしてマードックを連続殺人の容疑者として追ううちに街の謎に気づき始めたバムステッド警部(ウィリアム・ハート)の協力を得て、マードックはこの太陽が昇らない街、“ダークシティ”に潜む恐るべき真実を追う。


うむ、素晴らしい。久しぶりに観たがやはり素晴らしい。非常にマイナーな作品のような気がするが実際、どうなんだろ?あんまり知られてない作品なのかしら?ミーは初めてこの作品を観た時に一目ぼれ。なんともダークな世界観がたまらん。黒いコートとフェドーラ帽に身を包んだストレンジャーの風貌もたまりませんッ。主人公が己の存在に疑問を感じている点や○○○○というものに目覚める点、ストレンジャーが互いにミスター・ハンドやミスター・クイックなどといった無個性な名前で呼び合う点などが「マトリックス」と非常に相似しているので、「マトリックス」以降に量産された亜流作品かと思ったら、大間違いですよ皆の衆ッ。この作品の方が「マトリックス」よりも1年早く公開されております。金の掛け具合や主人公の知名度からすれば、こちらの方が断然地味だし、タイトルのつけ方やDVDのジャケット写真、デザインに関してももう少し頑張ってくれよと言いたくなるようなセンスだが、そんなことは関係ない。スゲェおもろいから騙されたと思って一度、観て欲しい。100分と尺もそんなに長くないわりには見応え充分。なにより編集が見事。ムダな描写がほとんどない。

説明口調の台詞もなく、なにがなんだか判らないままどんどん突っ走っていくストーリーに妙に引きこまれてしまう。なんだかとんでもなく支離滅裂で奇妙極まりない誰かの悪夢を覗いているような感覚。他人の夢を覗いているつもりなのに、ホントは自分が悪夢の主人公で誰かが自分の夢の中身をこっそり観察しているんじゃないのか?と思わせるような不思議な気持ちにさせてくれる作品。…すんません、語彙も貧弱なら表現も貧弱で。ミーのへっぽこ感想じゃ、この作品の妙に居心地の悪い感覚は伝えられねぇよ。あぁ、やるせない。

主人公のマードックを演じるルーファス・シーウェルは正直、どっちかというと悪人顔だと思うがなかなか演技派。非常に目力があるので○○○○を使いこなせるのも頷ける気がする。救○主然とした風貌ではないが、それがかえってラストに含みを持たせたカンジでいいかも。意外とロマンティストな男で最初はクドすぎる顔に抵抗感があったが、ストーリーが進むにつれチャーミングに見えてきた。エマと接見するシーンなんてちょっと泣いちゃいマシタからね。エマを演じるジェニファー・コネリーがなんとも魅力的。妙に艶っぽい。瞳が、唇が、身体のラインが、とにかく全てがイイッ!ナイトクラブで彼女が歌ってるシーンは必見。吹き替えだろうが構わん。彼女の古風な美しさがレトロな街並みのダークシティの雰囲気にぴったり。あ、ほんの数分しか登場しないが娼婦役のメリッサ・ジョージも色っぽくてたまらんッ。惜しげもなく色んなもんを見せてくれる彼女にバンザイッ←どこのエロおやじだ

脇を固めるキーファー・サザーランドとウィリアム・ハートも非常にいい。妙におどおどした態度の中にマッド・サイエンティストの片鱗を垣間見せるシュレーバーが登場するだけでニヤニヤしてしまいマス。ストレンジャーの手先となりながらも最後の最後でとんでもない奇策を打って出るシュレーバーはある意味、マードックよりもヒーローかもしれない。ウィリアム・ハート扮するバムステッド警部は寡黙で一見、冷たそうに見えるんだが頼れる男。ラストはとんでもないことになってしまい、「そんなアホなッ」と叫んでしまいマシタ。ミーはバムステッド警部が大好きなので、あのシーンは呆気に取られた。マードック、ボケっとしとらんで、どうにかしろと力強くツッコンでみた瞬間。

あ、ストレンジャーさん達。スキンヘッドで白塗りなので、山○塾の方々かと錯覚してしまいマシタ。集団で踊りだすのかとオモタ。どうして彼らが○や○○を嫌うのか、ちっとも説明はなかったけれど不気味さは充分伝わってきました。どのストレンジャーも不気味だが、中でもミスター・スリープがかなりコワイ。

あぁ、いかん。またも散漫でまとまりのナイ感想になっちまった。魂とはどれほどの価値があるのかという疑問と現実というものの危うさをテーマにした当作品は1940年代とドイツ表現主義をモチーフにしたレトロな街並みがその謎めいたストーリーにマッチして、SFにフィルム・ノワール、そしておとぎ話の側面を併せ持った逸品。
1998年/アメリカ/100分/監督:アレックス・プロヤス
DARK CITY
2009.03.23記

「シェル・ビーチ」
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