ダーククリスタル

時空を超えたはるか彼方に驚異の世界があった。千年前、その地は緑と善に満ちていた。だがクリスタルが割れ、欠片が失われてしまった…。そこから争いが生まれ2つの種族が出現した。邪悪なスケクシス族と善良なミスティックス族。クリスタル城はスケクシス族に支配され、彼らが覇権を握ってから既に千年。しかし不死と思われたスケクシス族も今や10人を残すのみ。絶大な権力を誇った皇帝の身体は衰弱し、枯れゆく土地で一族の絶滅の危機が迫っていた。太陽とダーククリスタルの力で生命力を得ようとするスケクシス族。しかし太陽の儀式は失敗し、皇帝はその生涯を終える。彼らの起源であり、宝であり運命の─ダーククリスタル。間もなくやってくる複雑な軌道を描きながら空を巡る大小3つの太陽が重なる“大合致”と呼ばれるその時、ダーククリスタルは巨大な力を得て、スケクシス族の力は再び往時の勢いを取り戻すだろう。

スケクシス族の僅かな懸念は予言に伝えられるゲルフリン族のこと。スケクシス族に仕える兵士ガーシムによってゲルフリン族は全滅させられたが、クリスタル城から遥かに離れた谷で善良なる賢者のミスティックス族の長老に保護され、ゲルフリン族の若者ジェンは生き延びていた。ミスティックス族の長老もまたその生涯を終えようとしていた。長老はジェンに告げる。クリスタルの欠片を探せ。そしてその欠片を元あった場所に戻すのだと。それがゲルフリン族に生まれたジェンの運命なのだと─。古よりの予言に従い、たった一人で旅立つジェン。彼に定められた運命とは?クリスタルを元の姿に戻すための冒険の道は険しく、幾多の苦難がジェンを待ち受ける。


人間は一切、登場しない人形だけによる驚異のファンタジー。アナタ、そんじょそこらの人形劇だと思ったら、大間違いですよ?登場する全てのキャラクターの個性的なこと。そして芸達者なこと。ジム・ヘンソンをはじめとした才能溢れるパフォーマーの力により、息を吹き込まれたマペット達が繰り広げるファンタジー世界にどっぷり浸れる当作品。まだ未見の方はもったいない。DVDも出てるんだよ!特典ディスクのメイキングがこれまたいいんだ。買っとけ、買っとけ!ま、ミーは貸してもらったんですが。とにかく借りてでもいいから、観といた方がいいよ。CG満載の最近の作品とはまた違った魅力に溢れている作品です。

ストーリーはホントに単純。悪に支配された国を救うために旅立つ少年の冒険物語。正直、主人公のジェンが一番目立ってもないし活躍もしてない気がするんだが、そんなことは些少な問題。確かな技術力と惜しみない労力を注ぎこんで作り出されたダーククリスタルの世界、そして生命を得た人形。美しくもグロテスクなその世界観にミーはすぐに惹きこまれてしまいマシタ。全てが生きている。醜悪なスケクシス族も穏やかで善良なミスティックス族もジェンが旅の途中で出会うポドリン族も皆がただ単に演じているというだけでなくジム・ヘンソンや沢山のパフォーマーがそれぞれの人形に愛情を感じながら演じたというのが観ているこちら側にもストレートに伝わる魅力的な動き。ジェンが迷い込む森の植物たちでさえ生きている。

ポドリン族の陽気な宴の様子は沢山のマペット達が自由気ままに歌い、踊るホントに楽しいシーン。生きているとしか思えない動きに全てが人形だということをすっかり忘れてしまいますよ。アンタ達、ホントは自分で動いてんじゃないの?魔女のオーグラもなんとも楽しいキャラ。スゲェ口うるさくて常に悪態をついてるいけすかない婆さまなんだが、妙に憎めないんだよね。○○を取り外して○を○ることが出来る小器用な婆さまが登場するだけで楽しくなっちゃう。ランドストライダーだけはちょっと微妙だったかな。いかにも竹馬に乗ってますってカンジがアリアリで違和感。出番は少ないながら活躍してくれるイイ子なんだけど。

そしてキーラ。ジェンと同じくゲルフリン族の生き残りである少女。この女の子が正にファンタジーのヒロインなのよ!なんとも健気な子なのよ!ジェンと出会って手を触れ合うシーンは必見ですよ、少年少女!いや、おっさんでもおばさんでも爺でも婆でも観てくれ。ジェンとキーラがお互いの記憶を共有するこのシーンは初恋を暗に表現していて秀逸。ま、記憶を共有しなくともキーラちゃんなら一目でフォーリン・ラヴですけどね。とにかく可愛いんだ。健気なんだ。自己犠牲も厭わない子なんだ。クリスタル城で彼女が見せる活躍は涙なくして観れませんッ。キーラのペットであるフィズキグも毛むくじゃらのカワイイ子。歯を剥き出して駄々をこねる姿はどう見てもグロテスクなんだが妙に愛嬌があって愛らしい。

ラストは呆気ないと言ってしまえばそれまでなんだけど、善と悪の本質を端的に伝えててKORO的には満足。お互いにマペットの操演しながら見事な演出もこなした2人の監督ジム・ヘンソンとフランク・オズ、コンセプチュアル・デザインを担当したブライアン・フロウドの魅力あるキャラクター、世界観にぴったりのトレヴァー・ジョーンズの音楽、グロテスクな中に美しさを忍ばせた巧みなセットや衣装、そして人形たちに命を与えたパフォーマー、この作品に携わった数多くの人の力が結集したこの作品は何年経っても色褪せない輝きに満ちております。
1982年/イギリス/93分/監督:ジム・ヘンソン、フランク・オズ
THE DARK CRYSTAL
2009.03.22記

「ジェンってマイコーに似てる」
アイ★ラブシネマTOPに戻る