時々、我が妹チャッキーは私に手紙をくれました。同じ部屋にいるのに。デモ、フツーじゃないの、そのお手紙。なんだか変なの。妙に文字が角ばってたり、ヨレヨレだったりするの。

チャッキーは左利きです。私も元は左利きなのですが、かなり小さい頃に伯母さんに直されて今では右利き。デモ中途半端に左利き。字を書くのとお箸持つのと包丁やハサミ持つのは右だけど、カッターナイフやホッチキス使う時は左。バット構えたりするのも左。雑巾絞るのも左。多分ギター弾くとしても左。チャッキーは伯母さんが怖くて伯母さん宅に寄り付かなかったので左利きは直されませんデシタ。デモ、右も使えたりする。右手と左手で同時に字が書けたりする（もしかしてチャッキーは天才なのか？）

で、何故か私に手紙をくれる時は右手で書くのですヨ。それか両方の手にペンを持ち、交互に字を書いていったりとか（やっぱり天才なのか？）…何故そんな面倒なコトをするのか不明。ついでに内容も意味不明。「悪徳の栄えとドリアン・グレイの肖像。悪の華とランボー詩集。人間失格！」とか、「デヴィッド・ボウイが地球に落ちてきました。ジゴロになりました」とか、「最近好きな言葉は“レトルトパウチ”と“缶蓋に記載”です。レモンとバラを漢字で書いたら、どっちの方が字画が多いのか数えるのですが、いつも途中であきらめます。だって辞書の字は小さくて数えにくいから」とか。返事に困ること必至。というか、返事を期待しているとは微塵も考えられない内容です。デモ、返事しないと機嫌を損ねる。返事出すまで延々、同じ文章の手紙を送りつける。口頭で済ませてもご機嫌斜め。ただ単に私に対する嫌がらせだったかと思われますが。

激しく機嫌を損ねるとチャッキーは手がつけられなくなるので、意味不明なお手紙に返事を出してみる。「ランボーよりらんぽうの方が好きです」とか、「ドリアン・グレイより、ドリアンくれぃ（キング・オブ・フルーツ、ドリアンくれというダジャレ）」とか、「デヴィッド・ボウイとアレキサンダー大王が相撲を取りました（byイブの息子たち）」とか、「私の好きな言葉は八丈島のきょん！です」とか。チャッキーの手紙も変ですが、私の返事も充分、変な気がするのは錯覚かしら？

けれど私が必死で考えて出した返事に難癖をつける鬼チャッキー。「アンタの文章にはロマンの欠片もない！そしてセンスもない！“八丈島のきょん”より“アフリカゾウがすき”の方が高尚よ！（昔の少年チャンピオンを読んでた人にしか判らないネタでスイマセン）」と猛烈に怒る。そんなコト言われても…。

チャッキーの謎手紙はかなり大人になるまで続きました。そして律儀にというか、半ば強制的に返事を書き、毎度ダメ出しされる姉KORO。これって美しい姉妹愛がなせる業かしら？あと、ず〜っと不思議に思ってたので、チャッキーに「何故右手で書いたり、両手で交互に書いたりするの？」と聞いたら、「筆跡鑑定を欺くため」とサラリと言われマシタ。あ、そうですか。ついでに内容も筆跡も変なチャッキーのお手紙、封筒はフツーの封筒でしたが便箋にはティッシュペーパーを使ってマシタ。何故！？天才だからか？…ただの嫌がらせ？

未だにチャッキーがくれる手紙はティッシュペーパーに書かれていたのか判らない凡人KOROデス。